研究課題/領域番号 |
18K15510
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 千秋 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 協力研究員 (40644034)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 脳磁図 / 母子インタラクション / コミュニケーション / ネットワーク |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD)児に特異的な対人交流特性を脳生理学的指標から捉えることを目的とし、世界唯一の,小児・成人用脳磁図(MEG)同時計測システムを用いて,親子の自然な交流場面の脳活動を測定した。ASD幼児およびTD幼児とその母親を対象に,①課題中のMEG計測,②認知機能発達評価,③自閉症症状の行動観察評価,④コミュニケーション能力を評価する質問紙などから得られたデータを総合的に検討し,ASDに特徴的なコミュニケーション障害に関連する神経ネットワーク機構を解明する。 本年度は、以下の2つの研究成果を挙げた。 (1)ASD群7ペア,TD群15ペアを対象に行なった予備実験結果の解析を行った。その結果、TD群において、読み聞かせ聴取中の脳内結合指数が、母親読み聞かせ条件時と他人読み聞かせ条件時において異なることが明らかになった。また左前頭部の脳内結合指数が子どもの社会性や認知能力と相関していることが示された。この結果は現在学術誌に投稿中である。 (2)実験プロトコルを改良し、新規にASD群5ペア、TD群11ペアの計測データを得た。主な改良点は以下の通りである①対象年齢の統制(5~6歳)②絵本の統制(短いおはなし×3、2セット準備)③会話内容の統制(話題の提示)④音声と顔表情のデータ記録
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予備実験のデータを解析し、その結果を論文にまとめ、投稿した。母子の自然な対人交流場面の脳活動を捉える指標として、脳内結合指数が有効であることを見出した。また、実験条件と対象年齢を統制した本実験を開始し、サンプルを収集している(ASD群5ペア、TD群11ペア)。本年度中に、目的としていたサンプル数の計測をすることはできなかったため、次年度も継続してデータ収集を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も継続して計測を行う(目標サンプル数、各群20ペア)。さらに、実験条件(母親条件/他人条件)や疾患の有無(ASD群/TD群)を精度良く検出できるような実験プロトコルおよび解析手法(マルチスケールエントロピー,Graph解析)の精査を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
自閉スペクトラム症児と定型発達児を対象としたMEG計測プロジェクトは複数の研究者の共同実験であり、30年度は本助成金から謝金を支払う必要がなかった。また、前年度までの科研費において研究代表者が購入したパソコンなどが、本研究でも使用できることが分かったため、本研究を実施する上で新たに購入するものの物品費を抑えることができた。また、本年度は実験データの収集と解析に多くの時間を費やしたことから、出張旅費や英文校正費に計上していた支出が抑えられた。次年度は、成果報告のための学会発表旅費や論文出版費に研究費を使用する予定である。
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