本研究課題によって申請者は、自閉スペクトラム症(ASD)や統合失調症(SCZ)の発症に強い影響を及ぼすゲノム変異を同定する目的で、国内最大規模のASDケースコントロールサンプル(合計308名のASDと299名のコントール)やASD・SCZ多発家系(合計31家系)のエキソーム解析並びにエキソームデータ収集を実施した。ASDのエキソームケースコントロール解析によって、日本人ASD患者には、機能喪失変異が生じにくい遺伝子群、FMRPに関連する遺伝子群に加え、シナプス機能に関連する遺伝子群において、機能喪失変異やミスセンス変異が集積していることを証明した。さらに、シナプス機能に関連する遺伝子群の変異についてさらに詳細にGene Ontology解析を実施した結果、後シナプスのシグナル伝達に関わる遺伝子群への変異が集積していることが示唆された。ASDケースコントロール研究の結果については現在論文化中である。また、ASDケースコントロール研究で発症脆弱性変異であると示唆された変異に加えて、ASD多発家系解析によりde novo 変異に加え患者間で共有する変異を抽出して遺伝子ネットワーク解析を実施したところ、神経発達に重要な影響を持つSMARCA1Aを中心とする遺伝子ネットワークを同定した。さらにSCZの多発14家系のエクソームデータから、各家系内で患者群に集積している変異についてGene Ontology解析を実施した結果、SCZ多発家系内には、カルシウムチャネル関連遺伝子群が集積していることが判明した。SCZ多発家系研究の結果は、現在投稿中である。
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