研究課題/領域番号 |
18K15514
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
諏訪 太朗 京都大学, 医学研究科, 助教 (10518153)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クロザピン / NMR / 治療抵抗性統合失調症 / clozapine |
研究実績の概要 |
治療抵抗性統合失調症に対し、抗精神病薬クロザピンの有効性は広く知られている。しかしクロザピンの投与初期には顆粒球減少、流涎、発熱などの副作用が出現しやすく、副作用を理由として導入1年以内にクロザピンの投与中止を余儀なくされる例は導入例全体の12%程度に上る。 本研究は血清からクロザピンの副作用の発生を予測し、クロザピンの導入・再投与の安全性を高めるバイオマーカーの確立を目指すものである。治療抵抗性統合失調症患者のクロザピン導入前および導入後初期の血清を核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)計測し、その解析には、特定の物質に着目せず、「NMR信号をひとつの物性値として解析する」独自の手法を用いる。 本研究は多施設縦断研究であり、3年間で100例の検体の収集を目標とする。クロザピン治療の対象となった治療抵抗性統合失調症患者のクロザピン導入前および導入初期の血清を採取し、血清のNMR計測によって得られたデータを独自の手法により解析する。後の臨床データに基づいて症例を、①副作用によりクロザピンの投与を中止した患者群(中断群)、②投与を継続した患者群(継続群)の2群に振り分ける。なお、副作用以外の理由で投与を中止した群は脱落として取り扱う。 その上で全ての副作用を理由とした服薬中止を予測できるか、5例以上出現した副作用についてはその副作用に限定した予測が出来るかについて、血清のNMR信号の推移から予測可能であるかどうかを検討する。 平成30年度は10症例の血清を収集し血清のNMR測定を行った。また、研究協力者の平川、小池らは当研究で用いるNMR信号の解析法について英語論文の発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究は京大病院ならびに協力医療機関に入院した治療抵抗性統合失調症患者のうち、20歳以上65歳未満で本人もしくは代諾者の書面による同意が得られた症例を対象としている。血清採取は、1)クロザピン導入前1週以内の採血時、2)クロザピン導入後の定期採血時(1、2、5週後)の計4回行い、クロザピン導入から1年後まで、評価尺度、副作用、併用薬剤、中断の有無とその理由、について情報を収集する。 平成30年度は40症例の検体と臨床情報の収集を行う予定であったが、実際に収集が完了したのは10症例に留まっており進捗状況は予定よりもやや遅れている。原因としては連携施設を含め、クロザピン導入症例数が事前予測よりも少なかったことが挙げられる。また、クロザピン導入を行う症例は重症例が多く研究参加への同意が得られなかった症例が複数存在したことも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年には40症例、平成32年度には20症例の検体・臨床情報収集を予定している。得られた検体・臨床情報に基づいて平成31年度にはクロザピン中断の予測可能性について、平成32年度には特定の副作用の出現予測についても検討を行う予定である。 検体収集の遅れへの対策として、協力施設の追加を行う予定であり、既に3施設からは協力について現実的に検討して頂いて居るため、本年度の前半には倫理委員会の承認を得た上でそれらの施設でも検体の収集を開始できる見通しである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に収集した検体数が当初予定を下回っていたために検体のNMR信号計測のの件数が少なく、物品費の支出が予定を下回った。平成31年度は協力施設を増やすことで収集検体の増加を見込んでおり、NMR信号計測のための支出も増加する予定である。また、協力施設との連携にあたり、検体の輸送も要するため人件費と旅費もより多く使用する。
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