研究課題/領域番号 |
18K15518
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
越智 紳一郎 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (40568911)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 間歇型一酸化炭素中毒 / 海馬神経細胞新生 / グリア細胞 / 神経前駆細胞 / アストロサイト |
研究実績の概要 |
間歇型一酸化炭素中毒は急性の一酸化炭素中毒のあと、一旦改善し精神神経学的に無症状が約2~4週間続いた後、突然悪化し重篤な認知機能低下をはじめ種々の精神症状を呈する病態であり、その発症機序は未だ不明である。海馬は主に歯状回において成人後も神経細胞新生を行うことが知られている。今回、間歇型一酸化炭素中毒の病態解明のため、一酸化炭素が成体神経細胞新生に与える影響を調べるため、間歇型一酸化炭素中毒モデルラットを作成し、その検討を行った。 一酸化炭素に曝露させたラットを、3週間認知機能低下を受動回避試験により確認した。3週間後安楽死させ、脳組織を取り出し凍結切片を作成し、免疫組織化学染色を行った。 免疫組織化学染色では、神経幹細胞のマーカーのひとつとして知られているSOX2陽性神経細胞と一般的にアストロサイトのマーカーのひとつとして知られるGFAP陽性細胞の両陽性細胞が一酸化炭素群において有意に減少していることを確認した。これら両陽性細胞は海馬の顆粒細胞下帯神経前駆細胞の減少を示唆している。 更にモデルラットから脳海馬組織を取り出しRNAを抽出しcDNAに逆転写しリアルタイムPCRを行ったところ、これらSOX2、GFAPの遺伝子発現は有意に低下していた。一方で成熟アストロサイトに発現しているEAAT1、EAAT2は有意差を認めず、S100bは有意に上昇を認めた。これらの結果からGFAPの発現の有意な低下は成熟アストロサイトの発現の低下ではなく、神経前駆細胞を含むより幼若な細胞が傷害されている可能性が示唆された。 これらの結果から、間歇型一酸化炭素中毒は神経前駆細胞を障害し、少なくとも3週間はその発現を抑制している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
間歇型一酸化炭素中毒が成体神経細胞新生に及ぼす影響を免疫組織化学及びリアルタイムPCRによる遺伝子的にも確認することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
神経前駆細胞への影響をさらに検討するため、神経栄養因子の発現やマイクログリアなどの他のグリア細胞の関連を検討する。さらに神経幹細胞への影響の確認のためウェスタンブロッティングによるタンパクの発現やその他の神経幹細胞マーカーの免疫組織化学染色による発現などの確認を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度予定していた以上に実験経過が順調であったこと、一方で論文などの発表に関しては遅れが生じたため次年度使用額が生じることとなった。 今年度神経前駆細胞への影響をさらに検討するため、神経栄養因子の発現やマイクログリアなどの他のグリア細胞の関連を検討する。そのため神経幹細胞への影響の確認のためウェスタンブロッティングによるタンパクの発現やその他の神経幹細胞マーカーの免疫組織化学染色による発現などの確認を行っていく予定である。そのための試薬や抗体など購入のため、及び成果発表のための旅費や論文発表の印刷代などに用いていく予定である。
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