研究課題/領域番号 |
18K15524
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
大塚 剛司 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (60760395)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 時計遺伝子 / Bmal1 / ChAT / 情動行動 / コリン作動性ニューロン / 脳 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでの研究において、情動行動異常を示す時計遺伝子Rev-erbα KO マウスが、コリン作動性ニューロンの機能低下を示すことを明らかにした。これを受けて、本研究では、Rev-erbαの下流にある時計遺伝子Bmal1がコリン作動性ニューロン特異的にKOされたマウスを作成し、生体リズムと気分障害を繋ぐ分子メカニズムの解明に迫る。 本年度は、まずChATプロモーター下流域にCreを発現させたマウス(ChAT-cre マウス)と、Bmal1がfloxedされたマウス(Bmal1-floxed マウス)を掛け合わせ、コリン作動性ニューロン特異的Bmal1 KO マウス(ChAT-Bmal1KO マウス)を作成した。このマウスを用いて、オープンフィールドテスト、高架式十字迷路テストおよび強制水泳テストの3種類の行動テストを行った。その結果、オープンフィールドテストにおける移動距離(自発運動量)および中央滞在時間(不安の指標)、強制水泳テストにおける無動時間(うつの指標)は、コントロールとして用いたBmal1 floxed マウスと比べて、有意な差はみられなかった。一方、高架式十字迷路テストにおいては、不安様行動の指標であるOpened Armsへの進入回数および滞在時間に有意な差はみられないものの、同じく不安様行動の指標として扱われるClosed ArmsおよびNeutral Zoneの滞在時間がコントロールマウスと比べて有意に長いことがわかった。このことから、Chat-Bmal1KO マウスは不安様行動示す可能性が示唆され、コリン作動性ニューロンにおける時計遺伝子の発現異常は、不安を含めた何らかの情動行動異常を引き起こすことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の所属機関異動(平成30年4月に異動)に伴い、ChAT-cre マウスおよびBmal1-floxed マウスを現所属機関の飼育施設へ移動する必要があった。しかし、移動手続きおよび検疫の遅延(到着が平成30年11月、検疫終了が平成31年2月)に加え、前所属先でのmatingに関わるトラブルにより、Bmal1-floxed マウスに別の遺伝子が混入してしまっている。そのため、現在はその遺伝子を抜くためのMating作業および新規実験環境のセットアップを同時に行っているので、研究の進捗は遅れている。今後は研究期間を1年延長し、次年度から本格的に研究を再開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ChAT-Bmal1KO マウスが不安に似た情動行動異常を示す可能性が示唆されたが、表現型としては少し弱い。そのため、今回実施した3つのテストと異なる指標の行動テストを実行し、行動異常の種類を明確にする必要がある。行動の表現型を明確にした後、コリン作動性の神経核であるBasal of Mynertおよび投射先であるPrefrontal cortexの機能と時計遺伝子との関わりを検討し、行動異常発現の原因を探る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、研究代表者の所属機関異動により、当該年度に購入予定であった遺伝子改変動物および研究機器が購入できなかったことが挙げられる。また、研究期間を1年延長することから、本来使用するはずであった旅費や研究にかかる物品の購入がなかったことも理由の1つである。次年度は、現所属機関における研究室の立ち上げおよび実験環境のセットアップにかかる費用との兼ね合いをみて、これらの導入を検討する。
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