研究課題/領域番号 |
18K15528
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
北川 裕子 帝京大学, 医学部, 研究員 (90816159)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自殺リスク / 精神不調 / 予測指標 / スクリーニング / 精度 / 保健室 / 健康診断 / 学校 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自殺リスクの高い若者を特定するための実用的なリスク予測アルゴリズムを構築し、高リスクの対象への早期の適切な支援促進に貢献することである。具体的には、学校・医療機関の両面の多施設共同での研究遂行により次の2点を実現することである。1)自殺企図および自殺に関連するリスクを予測するアルゴリズムの構築---学校・医療現場から収集される多様な情報を活用し機械学習を用いて自殺リスクを有する若者の特徴・パターンを解明する。2)潜在的に自殺リスクの高い若者と接する学校教員(養護教諭)や医療従事者のリスク発見促進とケアの意思決定を補助するツールの開発---データの収集システムは携帯端末およびクラウドを活用する。システムには国際的に評価されている自殺リスクに関する質問項目に加え日常的な事象に関する項目を搭載し、入力後に個人のリスクの程度が可視化されるシステムを構築する。また若者が精神不調を回答しやすい構造の工夫も進める。以上を達成するために、2018年度中に実施したことは次の通りである。 ・新潟県教育庁からの要請で、県立高校10校に代表者が開発した「精神不調アセスメントツール(RAMPS)」を導入し、保健室での自殺リスクを含む精神不調スクリーニングを実施。学校でのリスク評価と事後対応(保護者・医療機関等との連携)に寄与した事例が複数件報告された。10校での実施実績が新潟県に認められ、全県へのRAMPS導入が決定した。2019年度は22校で実施、段階的に実施校を拡大していく。 ・埼玉県T市教育委員会からの要請を受け、市内小中学校にて学校健康診断の中でRAMPSを活用した精神不調アセスメントを実施した。その結果、複数の高リスク児童生徒が検出され、事後対応に寄与した。 得られたデータをもとに予測指標の妥当性・信頼性を確認し、より予測精度の高いリスク評価指標の構築を目指し、データ解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2018年度の新潟県立高校10校での研究実績が認められ、今後は全県実施(高等学校全校および中等教育学校)での研究導入が決定した。これにより、既に得られたデータをもとに予測精度の確認を行うとともに、今後得られる大規模なデータを解析することで、実用性の高い自殺リスク予測アルゴリズムの解明を進めることができると考えられるため。さらに、埼玉県T市での学校健康診断での実施により、当該の小学校・中学校においても全校生徒を対象に精神不調アセスメントを行うことができた。リスクが潜在的に高い児童生徒の抽出ができたと考えられ、その後の事後対応モデルの構築にも寄与できた事例が複数件報告されたため。(代表者らが近隣の医療機関に本事業について説明し、学校と医療機関等の連携先の拡大を行うことができた)リスク評価だけでなく、事後対応モデルの提案までを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
自殺リスク予測指標の構築に向けて、得られるデータの解析を中心に行い、論文執筆を進める。 新潟県での大規模な調査のため、ツールの改良、開発を進める。また、2019年度は東京都内の都立高等学校等でも研究導入が決定しているため、教員への研修を含め導入準備を進める。研究協力学校から寄せられる声を参考にしながら、学校で真に実用的な精神不調アセスメントツールの開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究概要を説明するために冊子資料を制作しているが、研究を進めるうちに加筆が必要となり完成を延期とした。このため、当該年度内に使用予定であった額に余剰が発生した。
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