研究課題/領域番号 |
18K15537
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
寺島 真悟 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (00583733)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 低線量放射線 / 複数回照射 / 放射線抵抗性細胞 |
研究実績の概要 |
申請者は、高線量率で低線量放射線を短時間のインターバルで複数回照射することにより、総線量が同じ単回照射と比べて癌細胞生存率が効果的に低下することを見出している。本研究では、申請者が考案した低線量放射線を用いた短時間間隔での複数回照射方法が放射線抵抗性癌細胞の癌病態制御に有効かどうかを検証するとともに、その作用機序を明らかにし、照射間隔制御による難治性癌にも有効な放射線治療戦略を確立することである。 2018年度は、東北大学加齢医学研究所で樹立された臨床的放射線耐性SAS-R細胞及びその親株であるSAS細胞を用いて、申請者が考案した複数回照射方法が放射線抵抗性癌細胞の癌病態制御に有効かどうかを検証した。単回照射及び低線量の複数回照射(1回0.25 Gy、照射間隔10秒、総線量2, 4, 8 Gy)を行い、コロニーアッセイにて生存率を評価したところ、SAS、SAS-R ともに低線量の複数回照射をした場合に、総線量が同じであっても単回照射と比べ有意な細胞致死効果の増強が観察された。臨床への応用を考慮し、5日間の連続した低線量の複数回照射( 1日2 Gy (0.25 Gy×8回))のX線照射を5日間連続で行ったところ、照射期間中の大きな細胞数の変化は観察されなかったが、照射終了から 2日後 において、単回照射と比べ低線量の複数回照射で有意な細胞数の減少が観察された。メカニズム解析としては、DNA2本鎖切断の評価を抗γH2AX抗体を用いフローサイトメーターで解析した。8 Gyの照射において、両細胞において照射後24時間以降で複数回照射のγH2AXの蛍光強度が単回照射と比べ増加する傾向が観察された。 放射線抵抗性株においても、低線量の複数回照射によって細胞致死効果の増強が得られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線抵抗性の低酸素細胞の作成において、低酸素状態確認のための低酸素誘導因子HIF-1αの検出及び低酸素曝露条件の検討が難航し研究の進捗が遅れた。しかしながら、現在は実験条件を確立することができており、次年度における大きな進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、今年度に引き続き低酸素細胞での実験を行った後、細胞遊走能・浸潤活性能といった癌病態に対する本手法の影響評価を実施する。 その他の検討項目に関しては、一部今年度に実施済みであるがメカニズム解析を当初の研究計画の通りに遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の研究に若干の遅れが生じたため、当該年度の支出が当初より少なくなった。 2018年度に実施出来なかった実験項目は2019年度に実施するため、繰り越した分の助成金は検討項目実施のための実験消耗品費として2019年度に使用する。その他の研究費の使用計画については申請書の通りに遂行する。
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