食道癌治療において放射線療法の担う役割は極めて大きい。本研究は放射線感受性のない癌に対し放射線感受性を増強させる放射線感受性増強剤を開発し、新規癌治療を確立することを最終目標としている。平成30年度は①放射線感受性に関与する遺伝子の抽出、②固形癌における放射線治療効果とMAPKリン酸化遺伝子発現の相関の検証を計画していた。放射線感受性の異なる複数の食道癌細胞株でDNA microarrayを用い網羅的に比較解析を行った。その結果、いくつかの遺伝子が抽出され、放射線感受性に関与していることが示唆された。特に食道癌細胞においてIGF2BP3をknock-downすることにより、放射線アポトーシスの誘導が促進された。さらに、食道癌組織microarrayを用いた免疫組織染色でIGF2BP3と予後を解析すると、手術単独治療群においてIGF2BP3高発現群は有意に予後不良であることが判明した。IGF2BP3は放射線治療抵抗因子であると同時に、予後不良因子である可能性が示唆された。今後はMAPKリン酸化遺伝子とともにIGF2BP3遺伝子を増幅、抑制した細胞での放射線治療効果を検証し、動物実験へつなげていく。
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