放射線療法は食道癌治療において極めて重要な役割を担っており、治療成績の改善に大きく貢献した。しかしながら食道扁平上皮癌の放射線感受性は個体差がある。食道癌の個別化治療を目指すうえで放射線感受性因子の究明は重要な研究課題である。本研究は放射線感受性のない癌に対し、放射線感受性を増強させる放射線感受性増強剤を開発し、新規治療を確立することを最終目標としている。REGIαが放射線感受性バイオマーカーであると報告してきており、食道扁平上皮癌細胞を用いた実験でREGIαはMAPKを介し放射線感受性を獲得することを示した。放射線感受性の異なる複数の食道癌細胞株でDNA microarrayを用い網羅的解析を行ったところ、IGFBP3が放射線感受性因子の候補として挙げられた。また、組織マイクロアレイを用い食道扁平上皮癌IGF2BP3発現を解析し、手術単独群ではIGF2BP3の発現は予後不良因子でることを示した。さらに、IGF2BP3高発現症例では術後補助療法を行うことが良好な予後と関連することが示された。食道扁平上皮癌においてIGF2BP3発現は予後不良予測因子であることに加え、術後補助療法の適応に際し重要なマーカーであることが示唆された。今後は術前化学放射線療法後前後の組織・血液サンプルから有意に変化する複数のDNAを抽出し解析する。抽出した遺伝子、MAPKリン酸化遺伝子、IGF2BP3遺伝子を増幅、抑制した細胞で放射線効果を検証する。放射線感受性関連遺伝子をノックイン・ノックアウトした癌細胞をヌードマウスに移植し、放射線感受性効果を確認する。その後、ヌードマウス皮下腫瘍モデルを用いた動物実験につなげていく。
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