研究課題/領域番号 |
18K15543
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小森 隆弘 金沢大学, 附属病院, 医員 (80816356)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光音響イメージング / 腸管虚血 / 組織内酸素飽和度 |
研究実績の概要 |
本研究では光音響イメージングを用いて生体内における組織内酸素飽和度の可視化及び定量化を行い、その腸管虚血との関連を評価することを目的としている。 今年度はラット虚血・再灌流腸管の評価のもとになる腸管虚血モデルの作成ならびに光音響イメージングによる解析を行った。ラットの導入麻酔はイソフルランあるいはジエチルエーテルによる吸入麻酔で、維持麻酔はイソフルラン吸入あるいは三種混合麻酔(塩酸メデトミジン、ミダゾラム、酒石酸ブトルファノール腹腔内投与)で行った。腹部正中切開により上腸間膜動静脈根部を確認しクリップでクランプ、虚血状態を生じさせ、一定時間の虚血後に再灌流させたが、辺縁動脈を介した側副血行路により虚血の程度に個体間のばらつきが生じたため、虚血状態の均一化、また臨床で最も遭遇することの多い絞扼による腸管虚血を想定したモデルを作成する方針に変更した。 腹部正中切開後、回盲部を同定し回腸動脈をクリップでクランプし辺縁動脈からの供血を阻害するために虚血腸管の口側、肛門側を結紮し絞扼状態と類似した腸管虚血モデルを作成した。同時に頸動脈にカテーテルを留置し、血中の酸素飽和度も測定している。加えて一定時間の虚血・再灌流後に腸管を切離し、病理所見の評価も開始している。また腸管虚血モデル作成の安定化を進めるとともに虚血・再灌流時間に応じた光音響イメージングによる虚血腸管の評価を行い,虚血時間・再灌流時間の再設定を検討している。 現時点で日常臨床において腸管虚血における切除の必要性の有無および切除範囲は術者の主観に委ねられており、そのばらつきも大きいため、簡便に施行できる光音響イメージングによる定量的な評価の意義は大きい。組織内酸素飽和度や血液検査所見、病理所見を対比させ、治療方針の決定に寄与できる客観的な指標の確立することが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット虚血腸管に対する光音響イメージングによるデータ収集を行うとともに、基礎的データの収集、加えて虚血腸管の病理組織所見の評価も開始している。これまでに得られたデータから虚血・再灌流時間の再設定にも取り掛かることができている。腸管虚血モデルの作成に変更を加えたため,多少時間を要したが、着実に動物実験の成果が得られており,(2)の「おおむね順調に進行している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
腸管虚血モデル作成の安定化を進め、腸管虚血・再灌流時間に応じた光音響イメージングによる解析、正確なデータを得る。また変更した腸管虚血モデルにおいて虚血腸管が真に虚血状態にあるかを血管造影で確認する。 光音響イメージングによる腸管組織内酸素飽和度のみでなく、頸動脈に留置したカテーテルより血中の酸素飽和度を測定し同時に採血を行い、乳酸などの血液生化学データを蓄積していく。さらに、病理組織所見をより詳細に評価し臨床的な予後を意識したグループ分類を行い、不可逆的な損傷を受けた群、可逆的な損傷に留まる群との比較を行い、組織内酸素飽和度による予後予測、病理組織所見、その他の検査所見との相関性についても検討を進めていく。 血管拡張薬や一酸化窒素合成酵素阻害薬、再灌流障害を抑制させる可能性の示唆されているアロプリノールといった薬剤による酸素飽和度への影響を検討することで、実臨床における虚血再灌流障害を緩和させる治療法についても検索する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラットを自家繁殖することが可能となったため、予定していたラット購入予算に余裕が生じた。また腸管虚血モデルの変更に時間を要したため、当初予定していた薬剤などの消耗品購入費用にも余裕が生じ、次年度使用額が生じた。 本年度は一定の腸管モデルを確立することができたため、実験症例数の増加が見込まれ、薬剤などの消耗品購入費などがより必要となる予定である。
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