研究課題/領域番号 |
18K15546
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小津 賢太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10650088)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心室頻拍 / 遅延電位 / 99mTcシンチグラフィ / カテ―テル心筋焼灼術 |
研究実績の概要 |
器質的心疾患に合併する心室頻拍(VT)に対して遅延電位(late potential:LP)をターゲットとするカテーテル心筋焼灼術が施行され、LPの術前の局在予測に造影MRIや造影CTといった画像診断が非常に重要な役割を担っているが、ICD等デバイス装着例、腎機能低下例、低左心機能例においては施行困難である場合も多い。本研究では、上記の制約を受けない核医学検査、安静時99mTcシンチグラフィでの心筋へのトレーサの取り込みの程度と領域が、カテーテル心筋焼灼術中にマッピングされたLPの局在領域との関連を比較し、99mTcシンチグラフィがLPの局在領域の予測について有効な手段かどうか解明することが目的である。 平成30年度にVTに対するカテーテル心筋焼灼術施行前に99mTcシンチグラフィを施行した6症例において、カテーテル心筋焼灼術中に左室全体の電位波高、LPの有無を記録し、99mTcシンチグラフィでのMIBIのuptake率との相関を確認したところ、特に虚血性心筋症においてはuptake率35%をcutoff値とすることで、uptake率35%未満の心筋のviabilityが低下した領域において有意にLPが存在することが確認できた。ただし、マッピングを行う中でより拡大した左室においてカテーテルが到達困難な箇所も存在し、そちらでは正確なマッピングが行えていない可能性があり、今後本研究の精度の向上のためにマッピング方法を検討するという課題が明確となった。また、uptake率35%未満の領域でもLPが存在する領域、存在しない領域の組織学的な性状評価についても今後検討課題であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請の時点で虚血性心筋症5例、非虚血性心筋症5例を予定していたが、心室頻拍に対する心筋焼灼術自体は10例以上経験できたが、術前に血行動態や日程的にTc心筋シンチグラフィを施行できない症例もあり、虚血性心筋症5例、非虚血性心筋症1例の登録となった。 一方で虚血性心筋症ではTc心筋シンチグラフィのトレーサのuptake率で35%をcut off値とすることで35%未満の領域において感度77%、特異度89%と良好な診断精度で遅延電位(LP)の局在を予測することが可能であった。 H30年度以前の症例のデータも含めて解析を行っても同様にMIBI良好な関連性が得られており、引き続き平成31年度も症例登録を行い精度の確認を行う。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き症例の登録は継続するが、現時点の解析においても99mTc心筋シンチグラフィのトレーサのuptake率と遅延電位(LP)の局在の有意な相関性は認めているため、論文発表を行う予定である。課題として拡大左室においてカテーテルの到達困難箇所があり、それらの領域の評価が不十分であることが研究のリミテーションとなると考えられたため、到達困難な領域の特定やマッピング方法の考案のため、今後拡大左室モデルを作成し、前記を評価することも併せて検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、平成30年度に当初想定されていたマッピングのために必要なAgilisシースの購入額とマッピングで得られた心電図波形を解析するためのバードラボシステムのレンタル料が当院内での支払いが可能となり賄えたこと、また国外・国内の学会参加についても他参加予定であったが不参加であったことである。平成31年度は国外・国内含め学会参加を予定しており、論文発表準備を進める予定である。また、本研究内で新たに明確となった課題についての追加の検討事項につき、拡大左心室の心臓モデルの作成等も予定している。
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