研究課題/領域番号 |
18K15551
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今野 伸樹 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (40815320)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 染色体異常 / DNA損傷 / γH2AX / PNA-FISH / 直腸癌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は直腸癌に対する術前化学放射線療法を受ける患者のDNA修復能および放射線感受性を評価し、治療効果及び有害事象を予測する評価指標の構築を目指すことである。広島大学病院の倫理委員会の審査を通過し、対象症例の集積を開始し、現在までに14例の直腸癌症例から本研究の参加に同意を得た。治療に同意取得後、病状や本人の希望に治療を完遂できなかった3例、現在治療途中の3例を除き8例が治療を完遂しており現在までに同8例の患者において研究計画書に記載した下記の「検討1」及び「検討2」を評価した。 ●検討1.末梢血リンパ球中の染色体異常及びDNA損傷の解析 1.免疫染色法によるガンマH2AXフォーカスの経時的変化 2.PNA-FISH法による照射後の染色体異常の経時的変化(治療計画CT前後、初回放射線治療前後、45Gy照射時の放射線治療前後の末梢血リンパ球を採取し解析を行う。) ●検討2. 直腸癌術前化学放射線療法の治療効果及び有害事象の評価 1.治療効果の評価:病理医による手術検体の組織学的治療効果判定を用いる。2.有害事象の評価:急性期有害事象(皮膚炎、直腸炎、腸炎、膀胱炎など)、晩期有害事象(消化管出血・穿孔、腸閉塞、膀胱炎など)、周術期有害事象(縫合不全、排便障害、排尿障害など)の評価をCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Effect)ver4.0をもとに行う。客観的な評価を行うため、医師2名が独立して評価を行う。 当初の研究計画では年間5-10例で症例を集積する予定であり、予定以上の14例が登録され解析実績としても8例と計画通りに症例集積が蓄積している。現状では症例数が十分でないため、本研究の目的である治療効果及び有害事象を予測する評価指標の確率には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を開始する以前に直腸癌に対する術前化学放射線施行症例が年間10例前後であったことから、年間の予定登録症例を当初5-10例/年と予想していた。現在までに14例の登録を得ており予定以上の症例集積を得た。このうち症状増悪や患者希望により予定治療が完遂できなかった症例が3例あり、現在治療途中で未解析の秀麗が3例あるため8例で予定治療を完遂し計画した解析を終了しているため症例の集積状況としてはおおむね順調に進展している。 上記「研究実績の概要」に記載した「検討1」及び「検討2」は計画した実験手法に大きな問題なく計画通り遂行が可能であった。 一方で今後症例を蓄積した際に本計画の目的である「治療効果及び有害事象を予測する評価指標の構築」が実現するためにはより多くの症例を集積する必要があるため引き続き症例を蓄積していく必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の症例集積は対象患者の有無に依存するため、引き続き直腸癌に対する術前化学放射線療法施行する症例に対しては、研究について説明の上、同意が得られれば症例を集積していく。既に8症例でDNA損傷と染色体異常及び、有害事象と治療効果を確認しているが、現状では症例数が十分でないため、今後さらに症例蓄積と解析を進めることで、研究計画書に掲げた下記の「検討3」を実現する。 ●検討3. 治療効果および有害事象を予測する評価指標の確立 検討1における染色体異常やガンマH2AXフォーカスの経時的変化と検討2における治療効果及び有害事象の関連を解析し、治療効果および有害事象の予測および具体的な評価指標の設定が可能かを検討する。 上記検討3により本研究の目的である直腸癌の術前化学放射線療法における個別化医療の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に必要な実験器具及び試料、また研究計画書で記載した2台のパーソナルコンピューターのうち個人情報保護用の外部と独立した1台は研究開始と同時に必要であるため初年度に購入した。本研究に極めて重要となる染色体異常およびDNA損傷の解析を行う高解像度のパーソナルコンピューターに関しては、本年度の予算内での購入が困難であったため本年度予算の残額と次年度の予算を合算して購入する計画としたため残額が生じた。次年度予算で高解像度パーソナルコンピューターすることで本研究の要となる染色体異常及びDNA損傷の解析がより正確・かつ効率的に進む見込みである。
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