本研究の目的は直腸癌に対する術前化学放射線療法を受ける患者のDNA修復能および放射線感受性を評価し、治療効果及び有害事象を予測する評価指標の構築を目指すことである。広島大学病院の倫理委員会の承認を取得し、32例の直腸癌症例から本研究の参加に同意を得た。治療に同意取得後、病状や本人の希望に治療を完遂できなかった4例を除き、28が治療を完遂しており現在までに同20例の患者において研究計画書に記載した下記の「検討1」及び「検討2」を評価した。 ●検討1.末梢血リンパ球中の染色体異常及びDNA損傷の解析:1.免疫染色法によるガンマH2AXフォーカスの経時的変化 2.PNA-FISH法による照射後の染色体異常の経時的変化(治療計画CT前後、初回放射線治療前後、45Gy照射時の放射線治療前後の末梢血リンパ球を採取し解析を行う。) ●検討2. 直腸癌術前化学放射線療法の治療効果及び有害事象の評価:1.治療効果の評価:病理医による手術検体の組織学的治療効果判定を用いる。 2.有害事象の評価:急性期有害事象(皮膚炎、直腸炎、腸炎、膀胱炎など)、晩期有害事象(消化管出血・穿孔、腸閉塞、膀胱炎など)、周術期有害事象(縫合不全、排便障害、排尿障害など)の評価をCTCAE(Common Terminology Criteriafor Adverse Effect)ver4.0をもとに行う。 当初の研究計画では年間5-10例で症例を集積する予定であり、予定以上の32例が登録され解析実績としても28例と計画通りに症例集積が蓄積している。検討2-1に関して、治療効果として28例中3例に病理学的完全奏効が得られており、同3例においては45Gy照射後のγH2AXの数値が高い傾向が認められた。また検討2-2に関して有害事象がと染色体異常数に有意な相関が認められた。本研究と並行して行っている食道がんにおける染色体異常と有害事象の関係においても同様に有意な関連を認められており、本研究とあわせて新たな指標を確立することができた。
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