研究課題/領域番号 |
18K15554
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西 弘大 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10719496)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子イメージング / 内部被ばく / SPECT |
研究実績の概要 |
本研究は内部被ばく核種が生体内でどのような挙動をしているかを分子イメージング技術を用いて視覚的・定量的に解析することを目指すものである。これまでマウス体内におけるヨウ素の動態は論じられてきたが、実際に放射性ヨウ素の導体を経時的に画像化した報告はない。同一固体を生きたまま継続的に観察および定量できることが分子イメージングを用いる本研究の強みである。
本年度は マウス体内における放射性ヨウ素の輸送メカニズムを調査するとともに、ヨウ素-131および防護剤の投与を行い、マウス体内での動態変化をsingle photon emission computed tomography (SPECT)で経時的に追跡した。前年度はヨウ化カリウム(安定ヨウ素剤)を防護剤としてマウスに投与し、ヨウ素-131の動態の変化を追跡したが、ヒトとマウスの種差による防護効果の違いが顕著に表れた。ヒトでは放射性ヨウ素の摂取24時間前に防護剤を服用することが推奨されているが、この条件ではマウスにおいて防護効果は50%程度であった。 この経験を踏まえ、防護剤を投与する時間を2時間ずつ遅めて防護効果を検証した。その結果、ヨウ素-131投与の4時間前に防護剤を投与することでおよそ80%の防護効果を得られることが分かった。一方で、ヨウ素-131を投与する時間と防護剤を投与する時間の間隔が短すぎても効果は得にくく、同時投与した場合は50%程度の防護効果しか得られなかった。血管内に投与したヨウ素は体内動態が早く集積または排泄にかかる時間が非常に短いことが一因と思われる。
実際の内部被ばくは経口・吸入を主因としていることも鑑み、次年度は経口摂取を想定し、ゾンデを用いた胃内への投与と防護剤の効果を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により当大学のPET/SPECT/CT装置をメンテナンスしているメーカーおよび業者のサポート体制が機能しない状況が断続的に継続しており、従来よりもリモート点検の頻度を増やしている。 前年度の装置利用停止による遅れに加え、上記点検によって使用可能時間が制限される状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は胃内投与に焦点を当て、防護剤による放射性ヨウ素の動態変化を追跡する。また、放射性ヨウ素を消化管内で捕集する作用をもつ物質を見出したため、安定ヨウ素剤に加え、捕集剤の効果も検証項目に加えたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も出張および学会参加がキャンセルとなり、旅費が発生しなかった。PET/SPECT/CT装置の使用回数にも制限があったため、装置使用料も予想を下回り、残額が生じた。 試薬・実験動物の購入費およびPET/SPECT/CT装置利用料に充てる予定である。
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