研究実績の概要 |
従来の拡散強調像は腫瘍の良悪性の診断に役立つ。OGSE法は従来の拡散強調像よりも拡散時間を短くしたものであり、拡散制限が腫瘍内部の構造によるものか、あるいは腫瘍内の粘稠度によるものかを区別しうる。多種多様な脳腫瘍をOGSE法で観察し、良悪性が分からない脳腫瘍に遭遇したときに、OGSE法が良悪性の判断の一助になりうるか検討した。 頭蓋内の類上皮腫をOGSE法で観察して制限拡散の機序を明らかにし、Magnetic Resonance in Medical Sciences誌(17(3):269-272, 2018)に掲載された。粘稠度の違いに着目した基礎的検討はJapanese Journal of Radiology誌(36(7):415-420, 2018)に掲載され、類上皮腫の制限拡散の機序を考える礎となった。この基礎的検討の結果を踏まえ、頭蓋内の脈絡叢嚢胞を観察し、Magnetic Resonance Imaging誌(57:323-327, 2019)に掲載した。 頭蓋内の類上皮腫の拡散制限を、2次元や3次元のシミュレーションを用いて再現してきた。類上皮腫の多層構造や粘稠度、細胞膜内外での水分子の交換等のパラメーターを調整し、実際の症例に近づけることができた。 症例数が蓄積され、良性と悪性の脳腫瘍とでOGSE法を用いた拡散強調像の見え方の差異を観察することができ、Magnetic Resonance Imaging誌(72:34-41, 2020)に掲載された。OGSE法を用いれば良悪性の判断の一助になりうることから、OGSE法は手術や生検等の患者への侵襲を減らすことが期待される。
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