研究課題/領域番号 |
18K15566
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研究機関 | 京都医療科学大学 |
研究代表者 |
屋木 祐亮 京都医療科学大学, 医療科学部, 助教 (90802207)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ラジオセラノスティクス / PET / SPECT / 前立腺がん / ウレア誘導体 / ユニットカップリング型プローブ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、前立腺がんのRadio-Theranostics(放射性同位元素(RI)を用いた診断と治療の融合)を目的とした分子プローブの創製とその高度化利用にある。そして、前立腺がんに対する診断と治療を一体ととらえ、シームレスな画像診断から治療へのワークフローを構築するために、組み替え可能なユニット(標的認識、リンカー、シグナル放出)を有するユニットカップリング型分子プローブ創製法を利用した前立腺がんRadio-Theranosticsプローブの開発を計画した。 今年度は、プローブの合成及びシグナル放出ユニットにおけるGa-68標識法の開発を行った。プローブの合成において、標識認識部位として非対称ウレア構造を、シグナル部位としてポリアミノカルボン酸構造を有するウレア誘導体Aの合成に成功した。基礎的検討を行うためにGa-68よりも比較的半減期の長いGa-67を用いた標識検討を行ったところ、95%以上の標識率で反応が進行し、目的物[67Ga]Aが得られた。Ga-68標識法の開発においては、共振空洞型マイクロ波反応装置を用いることでポリアミノカルボン酸誘導体における標識効率を約5倍向上させ、反応時間の短縮及び前駆体量の低減に成功した。 候補化合物[67Ga]Aを用いて担癌モデルマウスを用いて放射能体内分布実験を行ったところ、腫瘍における放射能分布が見られ、PSMAを認識して[67Ga]Aが集積していることが示唆された。しかし、腎臓などの正常組織への集積も見られ、今後は代謝性リンカーを導入した候補化合物の検討を行い、標的臓器以外への集積低下を目指すなど、候補化合物のさらなる最適化を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前立腺がん担癌モデルマウスを用いてこれまでに見出した候補化合物Aの放射能体内分布実験の結果、本化合物が腫瘍への集積が示唆され、計画通りの挙動を示したことが分かり、薬剤設計の妥当性を確認でき、非常に有益な情報が得られたと考えている。今後、代謝性リンカーの合成も含め、さらなる構造最適化を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
候補化合物は担癌モデル動物を作製し、PSMA発現腫瘍への集積性、血液腫瘍比、肝臓腫瘍比、腎臓腫瘍比を指標にプローブの選定を行う。そして詳細なインビトロにおける情報として放射性同位体を用いた結合阻害実験にて阻害活性を測定する。 候補化合物は正常組織である腎臓への集積が問題となっている。そこで腎臓への集積低下を期待できるリンカー部位はリンカーのみを別途数種合成し、刷子縁膜酵素を用いたインビトロ評価及び正常マウスを用いたインビボ評価によって検討する。そこで見出されたリンカーを実際に非対称ウレア化合物に導入し、得られた候補化合物の結合阻害実験を進めると同時に、放射性標識(Ga-68, In-111)を行う。標識体を担癌モデル動物へ投与及びPET・SPECT撮像を行い、腫瘍集積性及び腎臓集積性を確認し、イメージングプローブとしての可能性を評価すること目標にする。もし、イメージングプローブとして有望な化合物を見出すことに成功すれば、引き続き治療用核種(Y-90, Lu-177)に置き換え、担癌モデル動物へ投与し、腫瘍集積性や腎臓集積性、そして腫瘍縮小度を確認し、セラノスティクスプローブとしての有用性も評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外研究留学を行ったため、研究期間を1年間延長した。そのため、4年目における物品費や旅費などの研究費執行を検討しており、次年度使用額が生じた。また、新型コロナウイルスによる研究活動の停止や学会の開催中止などのため、予定した使用額よりも少なくなってしまったことも原因である。4年目に学会発表やさらなる研究活動の推進を行い、研究費執行を計画している。
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