前立腺がんは病状の進行が比較的緩やかで早い段階での発見により根治が期待できるがんであるが,現状では確定診断のためには侵襲的生検が必要であり,CT,MRIによる形態学的な診断のみでは不完全であるため,非侵襲的に機能形態情報が得られる核医学分子プローブの開発が盛んに行われている。 Prostate-specific membrane antigen(PSMA)は前立腺がんにおいて発現が亢進する膜抗原であり、その発現量は前立腺がんの悪性度と相関することが報告されていることから、PSMAを標的とした前立腺がん用Radio-Theranostics(RIを用いた診断と治療の融合)プローブの開発研究を行うこととし、その過程において不可欠なRI標識法についてマイクロ波加熱を応用した放射性金属核種標識法の開発と候補化合物のRadio-Theranosticsプローブとしての基礎評価を行い、以下の結果が得られた。 1)金属放射性核種(Ga-68)と配位子を有する化合物(p-Bn-NCS-DOTA,DOTA-TOC)とのキレート結合反応について、共振空洞型マイクロ波反応装置を用いて標識検討を行ったところ、アルミブロックヒーターを用いた通常加熱と比較して、顕著に標識率が改善した。さらに、前駆体濃度が希薄な溶液状態でも,マイクロ波加熱によって標識反応を促進することが示された。 2)非対称ウレア誘導体TSY-1の合成に成功した。Ga-67を用いて標識反応を行ったところ、高純度な標識化合物を得ることに成功した。さらにPSMA発現細胞を移植した担ガンモデルマウスを用いて,本標識化合物の放射能体内分布実験を行ったところ、腫瘍への集積がみられ、比較的高い正常組織との集積比を示した。
|