研究課題
標準的な子宮頸がんの放射線治療では、遠隔後充填システム(RALS)を用いた腔内照射に先行する形でリニアック装置を用いた外部照射が行われ、この外部照射の段階で臨床的標的体積の大幅な縮小が見られる場合が多い。一方で、臨床的標的体積は膀胱内の畜尿量など周辺臓器の影響を受けて各治療回の間で大きく移動・変形することから、本邦では骨盤部に広く照射できる直交4門照射が照射方法として広く用いられ、結果的に臨床的標的体積に隣接する正常臓器にも広く高線量領域を生じてしまう。本研究では、外部照射による正常臓器の線量の低減を最終的な目標として、標的体積の日々の移動量と変形量の把握、および標的体積の縮小過程とラディオミクス画像特徴量を関連付けた標的体積縮小モデルの構築を目標とする。研究初年度である平成30年度は、過去症例のCTデータ及びコーンビームCTデータから治療標的体積の縮小の傾向を把握し、またラディオミクス特徴量を解析するシステムを構築することを目指した。過去の症例データの調査より、17~22回の直交4門照射の期間に体積が大幅に縮小するものとそうでないものがあること、体積が比較的大きいものは各治療回間で標的体積の移動・変形の度合いは小さいが、体積が中~小程度のものは各治療回間で移動・変形の度合いが極めて大きいこと、移動の程度が大きいものは特に膀胱内の蓄尿量の変動に強く影響を受けていることがわかった。また、ラディオミクス特徴量を抽出し解析するシステムに関しては、患者の画像データを順次追加できるようにソフトウェアを準備中である。
3: やや遅れている
当該年度では、過去に放射線治療を行った症例の治療計画CT画像やコーンビームCT画像などの画像データを複数入手し、臨床的標的体積の移動、縮小に関して比較、解析を開始している。解析ソフトウェアの準備も進めているが、十分な症例数を組み込めていない点や、モデルを構築するための適切な機械学習アルゴリズム選択の点で改善の余地があり、当初計画よりやや遅れている。
子宮頚部と体部を合わせた臨床的標的体積を、相対的に大中小の3グループに分けて、各治療回間の変形と移動の程度を評価し解析する。上記と並行してCT画像のラディオミクス特徴量を解析し、臨床的標的体積が外部照射によって2/3以下になったものとそうでないものを分類するモデルを構築する。またCT画像だけでなくMRI画像を併用することも検討する。治療完遂した症例のデータ追加は継続して行っていく。
当該年度の海外学会への参加回数が当初の予定よりも少なくなったため、想定していた旅費と学会登録費を次年度に使用することとした。次年度には当初計画よりも1回多く海外学会へ参加する予定である。
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Journal of Radiation Research
巻: 59 ページ: 327-332
10.1093/jrr/rry012
Cureus
巻: 10 ページ: e2548
10.7759/cureus.2548