研究課題
局所進行子宮頸がんの標準治療は同時化学放射線療法であり、患者の状態によっては放射線治療単独も選択されるが、いずれの場合も放射線治療が果たす役割は極めて大きい。放射線治療はリニアック装置を用いた外部照射が先行して開始され、その後に遠隔後充填システム(RALS)を用いた腔内照射が行われるが、この治療期間にprimary CTVである子宮頸部および体部の体積に大幅な縮小が見られることが多い。放射線治療期間中の子宮の縮小/非縮小は、子宮の変形とともにIMRTなどの高精度放射線治療の適応を難しくする要因の一つとなっている。そのため日本国内ではIMRTではなく三次元原体照射法が広く用いられる要因となっており、膀胱や小腸などCTVに隣接する正常臓器に対しても不必要な高線量の放射線が照射されているのが現状である。本研究は子宮頸がん患者の個々の状況にあわせた個別化医療としての放射線治療の提供を目指して、子宮の縮小/非縮小を事前に予測し円滑な適応放射線治療を支援するシステムの構築を目指している。令和元年度は以下のことを実施した。(1)FIGO分類IIBからIVBの50例の過去症例について、放射線治療前のCT画像と放射線治療開始1ヶ月後のCT画像を収集、また患者の年齢やSCC、CEAなどの腫瘍マーカー値などの臨床データの収集を行なった。(2)治療前と治療開始後1ヶ月後のCT画像上に描画されたprimary CTV輪郭を用いてそれぞれの体積を抽出し、体積縮小率を得た。50患者の縮小率のヒストグラムからGaussian Mixture Modelを用いて縮小群と非縮小群の2群に分類した。(3)放射線治療開始前のCT画像からラディオミクス特徴量を抽出し、primary CTVが放射線治療中に縮小する群と縮小しない群を治療前情報から分類するシステムの構築を試みた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、過去の子宮頸がん患者の画像データ、腫瘍マーカーデータを収集し、画像特徴量の抽出を行った。症例数は50例であり十分に多いとは言えないが、このデータ数で進めることとする。体積縮小・非縮小の予測モデルの構築についても作業を進めている。
現時点では2つの分類アルゴリズムを用いて予測モデルの構築を試みており、特徴量選択に関しても単変量解析を用いているのみである。予測精度は、分類アルゴリズムの違いだけでなく特徴量選択の手法の違いによっても大きく影響を受けることが先行研究にて知られており、今後は両者について複数の手法を組み合わせた形で予測精度を比較検討し、精度の高い予測モデルの構築を目指す。
海外学会の参加回数が想定よりも少なかったため。
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The Journal of Medical Investigation
巻: 67 ページ: 30-39
Physica Medica
巻: 61 ページ: 70~76
10.1016/j.ejmp.2019.04.018