研究課題/領域番号 |
18K15571
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
三浦 太一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線障害治療研究部, 研究員(任常) (30803209)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | FGF1 / シグナル / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
FGF1シグナルの主要な下流経路には、PKC経路、SRC経路、STAT3経路、SHC経路、ERK1/2経路、AKT経路があり、これらの下流経路を使い分けることによって様々な機能を制御している。これらの下流経路はPKC、SRC、STAT3、SHC、ERK1/2、AKTなどの主要なシグナル構成因子がリン酸化されることで活性化するため、リン酸化シグナル構成因子に対する抗体を用いたウェスタンブロット解析を実施することで、どの下流経路が活性化しているか検討することができる。平成30年度は、正常腸管上皮細胞においてFGF1シグナルにおいて、どの下流経路が活性化することで防護・再生が促進するのか検討した。検討には、改変型FGF1をFGFの強力なアゴニストとして用い、野生型FGF1と比較しながら、腸管組織細胞における作用を解析した。FGF1シグナルにおけるERK1/2経路の活性化を検討したところ、野生型FGF1に比べて改変型FGF1はERK1/2のリン酸化が長期間持続することを分かった。さらに、ERK1/2経路以外の下流経路を検討した結果、防護・再生の促進に寄与する数種類の下流経路の候補を示すことができた。今後、さらなる詳細な解析を実施し、防護・再生を促進するFGF1シグナル下流経路を同定する。改変型FGF1を投与し培養した上皮系の癌細胞においても、上記と同様の解析を行い、正常腸管上皮細胞と比較した結果、正常腸管上皮細胞と癌細胞で共通のシグナル経路が活性化していることが示唆された。今後、候補の経路に関する詳細な解析を実施し、正常組織細胞特異的に防護・再生を促進するFGF1シグナル経路を同定する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うまくいかない場合も想定の範囲内であったため、ほぼ計画通りに実施できた。
|
今後の研究の推進方策 |
正常組織の防護・再生を促進するFGF1シグナルの下流経路を同定するために、当初の計画に従い、候補経路の、Ⅰ.活性化レベルの違い、Ⅱ.活性化が持続する期間の違い、Ⅲ.シグナル経路の下流で発現が制御されている転写産物の違いに着目し解析を行う。具体的には、腸管組織細胞を用いて改変型FGF1を加えてからの各下流経路の活性化を継時的に検討する。加えてから短時間の間に活性化する経路、または長期にわたり活性化する経路などを同定する。また、改変型FGF1を投与した放射線障害モデルマウスにおいてどのFGF1シグナルの下流経路が活性化しているか検討し、候補となった経路がin vivoにおいても同様に活性化しているか検討する。さらに、候補となるFGF1シグナル経路に対する阻害剤を用いて防護・再生を促進するシグナル経路の同定も今後実施する。具体的には、各下流経路に対する阻害剤を、放射線障害モデルマウスに改変型FGF1を投与する際に併用し、FGF1による腸管組織の防護・再生を阻害できるか組織染色により検討する。また、候補となるFGF1シグナル下流経路の活性化剤が入手できる場合は、阻害剤と同様に、放射線障害モデルマウスに改変型FGF1を投与する際に併用し、FGF1による腸管組織の防護・再生をさらに促進できるか検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた高額な抗体・組織免疫試薬・阻害剤・マウスの購入を、次年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。
|
備考 |
多能性幹細胞におけるFGFシグナルの新規制御機構に関して、所属研究機関におけるプレス発表にて紹介された。
|