研究課題/領域番号 |
18K15572
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
茂木 佳菜 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医学物理士 (40740436)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線治療計画 / 頭頸部癌 / 強度変調放射線治療 / 堅牢性 |
研究実績の概要 |
放射線治療では,従来腫瘍のマクロおよびミクロな進展範囲を含めた臨床標的体積に,マージンを加えて幾何学的に拡大した計画標的体積を形成し,患者のセットアップエラーなどの位置不確かさを補うための強さ(堅牢性)を高めている。近年,幾何学的に単純に拡大した計画標的体積を利用せず,臨床標的体積のみを用いて患者の位置不確かさに対する堅牢性を高めるよう最適化計算を行うロバスト治療計画法が陽子線治療で導入されつつあるが,照射実験で堅牢性を示した報告は乏しく,光子線を用いた放射線治療ではない。本研究では,頭頸部癌の強度変調放射線治療において,患者の幾何学的な不確かさを生じても臨床標的体積への処方線量を維持しつつ,周囲の正常組織への線量低減するためのロバスト治療計画法を確立し,本方法で作成されたプランの堅牢性の高さを照射実験で評価している。 当該年度では,これまでに確立したロバスト治療計画法を用いて頭頸部癌に対する強度変調放射線治療のプランを作成し,耳下腺や口腔などの正常臓器,および,臨床標的体積に対する線量値を収集し,統計解析を行った。研究成果は海外論文に投稿するため準備中である。また,物理的検討としてロバスト治療計画法で作成したプラン(ロバストプラン)の堅牢性を人体模擬ファントムを用いた照射実験により検証する予定であったが,患者の実際の体型変化や腫瘍形状の変化も評価に含めるため,患者の診療情報を検証に利用することに変更した。本検証では,患者の診療情報,治療計画情報,および,照射情報を前向きに収集するため,倫理審査が必要となる。研究者の所属する研究倫理審査委員会で本研究の審議を受け,患者の診療情報等の収集を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度に予定されていたロバストプランに対する堅牢性の検討では,当初,人体模擬ファントムを使用してデータ収集を行う予定であったが,患者の診療情報等を収集して解析を行うことに変更した。変更した方法における手順の確立や倫理審査の準備のため,当該年度では予定外の時間を割いた。本方法では,データ収集は医師,および,診療放射線技師の協力の下,通常の診療フローの中で行われる。そのため,データ収集は滞りなく行われることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
ロバストプランに対する堅牢性の検討を患者の画像情報を利用して行う。放射線治療計画の線量解析に関する研究では,10例程度の患者データを用いて統計解析を行うことが一般的である。そのため,本研究でも参考研究と同様に10症例程度の患者データが必要と判断し,上咽頭癌,中咽頭癌,下咽頭癌のそれぞれに対して予定研究対象者数を10症例,合計30例とする。ロバストプランにおける臨床標的体積のカバレッジに対する堅牢性、および、ロバストプランにおけるリスク臓器の線量低減効果について評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の国際,および,国内学会は新型コロナウィルスの影響でweb開催となったため旅費が不要になった。次年度では,研究協力者と共に臨床データ収集や解析を行う予定である。解析に必要なパソコンやソフトウェアの購入を行う。また,成果発表のための学会参加費や旅費に使用する予定である。
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