研究課題/領域番号 |
18K15575
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
立石 恵実 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 放射線部, 医師 (20795596)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドPETイメージング / 高齢者心不全 / 心脳連関 |
研究実績の概要 |
世界に先駆けて65歳以上の人口が総人口の21%を超える超高齢社会に突入した我が国において、高齢者心不全は今後急増していく疾患の1つである。高齢者心不全は左室拡張能障害が一因と言われているが、そのメカニズムは十分に解明されていない。近年、認知機能障害の原因として最も多いアルツハイマー病患者の左室拡張能障害を有した剖検心にアミロイドβの蓄積が見られたという論文が発表され、認知機能障害と左室拡張能障害はアミロイドβの蓄積という共通の病態が関与している可能性が論じられた。また、高齢者心不全患者の30~50%は認知機能障害を合併しているとされ、服薬忘れなどによる再発が問題となっている。認知機能障害と左室拡張能障害との関連性の究明は高齢者心不全の病態解明に繋がり、医療だけでなく医療経済や社会福祉という観点においても有益であると考える。 脳に蓄積したアミロイドβを非侵襲的に可視化する画像診断法にアミロイドPETイメージングがある。2016年に臨床使用が許可されたF-18 Florbetapirは従来のアミロイドPET製剤と比較すると半減期が108分と長く、1回の投与量で全身のアミロイドPETイメージングの撮像が可能である。そこで、認知機能障害を有する患者の中から左室拡張能障害が疑われた患者を対象にF-18 Florbetapirを用いたアミロイドPETイメージングを撮像し、脳と心臓へのアミロイドβの蓄積を同時評価する研究を立案した。今までに4例の撮像を行い、1例に大脳と心臓の両方にF-18 Florbetapirの集積が見られた。心臓にF-18 Florbetapirが集積する機序については今後の検討が必要だが、F-18 Florbetapirを用いたアミロイドPETイメージングで大脳皮質だけなく、心臓に蓄積したアミロイドβも評価できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が所属する医療機関が2019年7月に移転したため、移転前1ヶ月は放射線管理区域の解除などでアミロイドPETイメージングの撮像ができず、移転後も撮像機器の調整やプロトコールの修正などに数ヶ月を要した。2020年2月からはCOVID-19感染による外出自粛などで研究協力者の確保が困難であった。よって、2019年度に予定していた撮像目標件数には到達できなかったが、アミロイドPETイメージングの撮像が終了している4症例の画像や患者背景を解析し、2020年7月に日本国内での学術集会で報告予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究当初は15症例のアミロイドPETイメージングの撮像を予定していたが、アミロイドPETイメージングで使用する薬剤(F-18 Florbetapir)が1バイアル¥248,000と高額なため、諸経費を差し引くと研究予算内で撮像できる症例数は約10症例である。2019年度は所属医療機関の移転やCOVID-19の影響で3症例しか撮像できなかったため、2020年度は研究予算の大半をF-18 Florbetapirの薬剤費に振り当て、最大6症例の撮像を予定する。COVID-19感染拡大により研究目的の検査が制限されているが、研究への協力を前向きに検討してくれている患者が数名待機しており、制限期間中に撮像機器の調整やプロトコールの修正も終了した。 COVID-19に関わる緊急事態宣言が解除され次第、アミロイドPETイメージングの撮像を再開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が所属する医療機関の移転により一時的に放射線管理区域の使用が制限されたこと、COVID-19感染拡大の影響で研究目的の検査が制限されたことにより2019年度は3症例しか撮像ができなかった。よって、2019年度にアミロイドPETイメージングの撮像を予定していた患者4症例分のF-18 Florbetapirの薬剤費を次年度に繰り越し、2020年度は最大6症例の撮像を行い、画像の解析結果や撮像方法などを主要学会や雑誌で発表する予定である。
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