研究課題
前立腺癌に対する放射線治療では、正常組織に高線量が照射されることによる尿道狭窄などの有害事象が問題となる。有害事象のリスクを最小限にするために、癌と前立腺内の正常組織を明確に識別し、正常組織への高線量を避けた治療計画が求められている。これまで、治療計画時に尿道カテーテルを留置し、正常組織を明確に識別することで有害事象のリスクを最小限にした放射線治療を実現してきたが、尿道カテーテル留置は侵襲的であり、尿道カテーテルの有無による再現性の不確かさが課題であった。本研究では、3T-MRIによる高分解能撮像により、尿道カテーテルの留置に伴う侵襲が不要となると考えられる。本研究課題遂行にあたり、2018年度は、前立腺内の正常組織である尿道を正確に把握することがきるMRI撮像法を確立するために、北海道大学病院にて保有する3T-MRIを用いて撮像パラメータの検討を行った。治療計画に用いる治療計画CTおよびMRIの撮像プロトコルを策定し、自主臨床試験として申請し承認された。自主臨床試験の登録に時間を要したため、本年度の患者登録は行えず、次年度以降、健常ボランティアでの撮像プロトコルの確認を行った後、本研究の実施期間でおよそ100名の登録を予定している。また、本研究に関連する基礎研究成果として、動体追跡陽子線治療における治療計画データおよび装置ログデータを用いた解析を行うためのデータベースの構築を行った。構築したデータベースを用いて定量的に解析することにより、動体追跡陽子線治療プロセスや尿道カテーテルの有無による再現性の不確かさについて検討した。解析結果を論文にまとめ、投稿中である。また、成果の一部を第15回日本粒子線治療臨床研究会(2018.10.7, 大阪)および60th Annual meeting for American Society for Radiation Oncology (ASTRO)(2018.10.21-24, San Antonio)において発表した。
2: おおむね順調に進展している
2018年度は、MRI撮像パラメータの検討を行い、放射線治療計画における撮像プロトコルを策定し、自主臨床試験として承認された。本年度における患者登録にはいたらなかったが、次年度以降、健常ボランティアでの撮像プロトコルの確認を行った後、本研究の実施期間でおよそ100名の登録を予定している。また、動体追跡陽子線治療における治療計画データおよび装置ログデータを用いた解析を行うためのデータベースを構築したことによって、動体追跡陽子線治療で得られたデータを定量的に解析できるようになった。動体追跡陽子線治療プロセスや尿道カテーテルの有無による再現性の不確かさについて検討し、成果を論文にまとめ投稿中である。しかし、リスク予測に関する解析を行うためのデータベースは不完全であるため、次年度において解決を目標としたい。
2019年度は、2018年度の成果を広く発表していくとともに、自主臨床試験による患者データの蓄積を行い、治療計画CTにおける尿道カテーテルを挿入し正常組織を同定した場合と尿道カテーテルを用いない本研究において策定した撮像プロトコルにて正常組織を同定した場合の比較を複数の観察者で検証を行う。また、正常組織への線量を低減した治療計画を作成し、正常組織への線量を低減していない従来の線量分布との比較検討を行う。
2018年度に予定していたMRI装置を時間外利用しての健常ボランティアでの検証に関しては、次年度に繰り越した。2018年度に作成したデータベースに追加機能を加え、解析・評価を行うためのワークステーションの購入を予定している。2018年度の成果発表のための旅費(Particle Therapy Co-Operative Group, Manchesterを予定)と2019年度の研究のための情報収集のための旅費、論文校正費に利用する。
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