研究課題
前立腺癌に対する放射線治療では、正常組織に高線量が照射されることによる尿道狭窄などの有害事象が問題となる。有害事象のリスクを最小限にするために、癌と前立腺内の正常組織である尿道を明確に識別し、正常組織への高線量を避けた放射線治療計画が求められている。本学では、治療計画時に尿道カテーテルを留置し、正常組織を明確に識別することで有害事象のリスクを最小限にした放射線治療を実現してきたが、尿道カテーテル留置は侵襲的であり、尿道カテーテルの有無による再現性の不確かさが課題であった。本研究では、3T-MRIによる高分解能撮像により、尿道カテーテルに伴う侵襲が不要となると考えられる。本研究課題の遂行にあたり、自主臨床研究に基づいて、本研究に参加することに同意いただいた患者に対し、本研究において検討している新しい撮像パラメータによる撮像法を従来の撮像法に追加して実施した。2020年度までに30名の患者が登録された。本研究実施期間におよそ最大100名の登録を予定している。また、本研究に関連する基礎研究成果として、動体追跡陽子線治療における治療計画データおよび装置ログデータを用いた定量的な解析を行い、動体追跡陽子線治療プロセスや尿道カテーテルの有無による再現性の不確かさについて検討した。さらに、本研究で得られた治療計画データを基に腫瘍制御率や正常組織障害発生確率をシミュレーションにより算出した。研究成果の一部は、国際学会での発表および論文として発表された。
2: おおむね順調に進展している
2020年度は、北海道大学病院の計画CT装置やMRI装置の機器更新によりデータ取得が困難な時期があったものの、症例数を積み重ねることができた。また、本研究で考案されたMRI撮像法についてまとめた論文が受理された。現在、本研究で考案した撮像法による治療計画のシミュレーション研究を国際学会に演題登録しており、おおむね順調に進展しているといえる。
2021年度は、これまでの研究成果を国内外の学会発表および論文として広く公開していくとともに、自主臨床研究による患者データの蓄積を行い、治療計画CTにおける尿道カテーテルを挿入し正常組織を同定した場合と本研究において考案した尿道カテーテルを用いないMRI撮像法による正常組織を同定した場合の比較を継続して行う。また、シミュレーションによる尿道障害リスク予測と腫瘍制御予測を行い、予定していた研究を総括する。
新型コロナウイルスの影響により予定されていた国際学会や国内学会への出張が中止となった。今年度より研究室の所属する学生が用いる解析用の端末を用意し、物品費として計上した。翌年度分として請求した助成金と合わせて、主に、学会参加費、論文公開に関わる英文校正費や投稿料として予算を計上する予定である。
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Physics and Imaging in Radiation Oncology
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