研究課題
前立腺癌に対する放射線治療では、前立腺内の正常組織である尿道に高線量が照射されることによる尿道狭窄などの有害事象がしばしば発生し、臨床的な問題となる。有害事象のリスクを最小限にするために、尿道を明確に識別し、高線量を避けた尿道線量低減放射線治療計画が求められている。本学では、治療計画時に尿道カテーテルを留置し、正常組織を明確に識別することで有害事象のリスクを最小限にした放射線治療を実現してきたが、尿道カテーテル留置は侵襲的であり、尿道カテーテルの有無による再現性の不確かさが課題であった。本研究では、尿道カテーテルを用いずに尿道の視覚化を可能とするMRI撮像法を提案した。これによって、尿道カテーテルに伴う侵襲が不要となると考えられる。さらに、本研究で提案したMRI撮像法を用いて同定された尿道に対する線量を落とした動体追跡陽子線治療計画を作成し、線量計算を行った。得られた線量分布より腫瘍制御確率と正常組織障害発生確率をシミュレーションにより算出した。その結果、我々が提案する尿道線量低減動体追跡陽子線治療は現在臨床で一般的に用いられている陽子線治療と比較して、腫瘍制御確率と直腸・膀胱の有害事象の発生確率を有意に下げることなく、尿道の有害事象の発生確率を有意に低減させることが出来ることを示した。また、本研究に関連する基礎研究成果として、動体追跡陽子線治療における治療計画データおよび装置ログデータを用いた定量的な解析を行い、動体追跡陽子線治療プロセスや尿道カテーテルの有無による再現性の不確かさについて検討した。更に、人工知能の技術を応用し、我々が提案する非侵襲的な尿道同定法による画質の向上に取り組んだ。研究成果の一部は、国際学会での発表および論文として発表された。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Physics and Imaging in Radiation Oncology
巻: 18 ページ: 1~4
10.1016/j.phro.2021.03.002
巻: 20 ページ: 23~29
10.1016/j.phro.2021.09.006
BJR|Open
巻: 3
10.1259/bjro.20210064