研究実績の概要 |
当研究室にて関節炎を高頻度に自然発生する系統のモデルマウス(McH-lpr/lpr-RA1)を用いた先行研究では、放射線照射に対する皮膚・肺の有害事象の増加を認めた。本研究では自己免疫疾患モデルマウスを用いて、放射線照射による有害事象の定量的検討を行い、その修飾因子として薬物が与える影響を検討を行った。 本研究では2019年8月よりMcH-lpr/lpr-RA1凍結胚を融解し、繁殖を行い実験対象として用いた。McH-lpr/lpr-RA1に対する抗マウスIL-6受容体抗体(MR16-1)の関節炎発症抑制効果が報告されており、放射線照射後に抗マウスIL-6受容体抗体の腹腔内投与を実施して肺・皮膚の病理組織学的解析を行った。McH-lpr/lpr-RA1に片肺照射30Gy単回照射後にMR16-1の腹腔内投与を7週間継続し、コントロール群には同容量のリン酸緩衝液(PBS)を腹腔内投与した。片肺 照射後1日、2週、4週、26週後に肺の組織標本を採取し、薬剤による放射線障害への影響を検討したが、各群ともに放射線照射による放射線肺障害を示唆する所見を指摘できなかった。放射線肺障害の所見を指摘できなかった理由として、標本作成のタイミングや検査方法の問題が考えられた。また、同実験で採取したマウス血清の追加検討では両群でIL-6R alphaIの上昇を認めたものの、L-1 alpha/IL-1F1, IL-6, IL-17/IL-17A,TNF-alphaなど炎症性サイトカインの上昇は両群ともに認められなかった。 本研究では抗マウスIL-6受容体抗体の自己免疫モデルマウスの放射線感受性への修飾効果を明らかにすることができなかった。実験対象としたモデルマウスの放射線感受性の評価や照射部位・線量についての検討が必要と考えられ、放射線照射後の皮膚障害の病態について病理学的再検討を行うこととした。
|