研究課題/領域番号 |
18K15583
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 岳史 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20727408)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラスチックシンチレーター / 患者QA / マシンQA / 2次元検出器 / 線量分布 |
研究実績の概要 |
本年度まで開発を進めていたシンチレータ検出器は、すでに2020年度で前立腺照射VMAT及び肺照射VMATガンマパス率100%を達していた。しかしながら繰り返しのX線暴露によりアクリルの透過度が劣化していく、という問題をクリアできずにいた。アクリルの劣化によりシンチレーション検出面から発行される光量は、すでに高線量が照射された領域のアクリル透過度劣化による影響を受け正確な線量分布から乖離が生じてくる。この影響は定量的評価を行う予定であるが、おおよそ1kGy程度の曝射からこのシンチレーター式検出器は患者QA(ガンマパス3mm3%)の閾値を越えてくる。研究レベルでの実用用途で目標は達成しているものの、商用レベルでの実用用途では未達であると考える。前年度から続きX線耐性の方策を模索していたがようやく2つの解決策まで辿り着くことができた。方法①は事前にプレドーズを行うことによりアクリルを黄変させておくというもの。この方法ではプレドーズ後はアクリル黄変が落ち着くという前提条件が必要であるが、文献などから情報を整理した限り際限なく黄変化つまり透明度の低下が進んでいくと推定している。1つ目の方法で解決する見込みは少ない。方法②は光学的に黄変の影響を受けない赤色波長を使用する方法である。赤色発光のシンチレーションでの実測テストを行っているがレスポンスは良くアクリル黄変の影響は受けていない。赤色発光シンチレーターは海外で1社しか販売しておらず、現在は入手が難しくなっていた。そこで自前で赤色発光シンチレーターを作成することにした。すでに作成は成功しており、あとは本研究目的に合った配合比の探索を行っているところである。販売している赤色シンチレーターでは発光のぼやけ、滲みがあったため本研究目的には最適とは言えなかった。自前での調整が可能になったことからこちらの問題も同時に解決できる可能性がある
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度から続きX線耐性の方策を模索していたがようやく2つの解決策まで辿り着くことができた。方法①は事前にプレドーズを行うことによりアクリルを黄変させておくというもの。この方法ではプレドーズ後はアクリル黄変が落ち着くという前提条件が必要であるが、文献などから情報を整理した限り際限なく黄変化つまり透明度の低下が進んでいくと推定している。1つ目の方法で解決する見込みは少ない。方法②は光学的に黄変の影響を受けない赤色波長を使用する方法である。赤色発光のシンチレーションでの実測テストを行っているがレスポンスは良くアクリル黄変の影響は受けていない。赤色発光シンチレーターは海外で1社しか販売しておらず、現在は入手が難しくなっていた。そこで自前で赤色発光シンチレーターを作成することにした。すでに作成は成功しており、あとは本研究目的に合った配合比の探索を行っているところである。販売している赤色シンチレーターでは発光のぼやけ、滲みがあったため本研究目的には最適とは言えなかった。自前での調整が可能になったことからこちらの問題も同時に解決できる可能性がある
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今後の研究の推進方策 |
X線照射によるアクリルの黄変、つまり透過度劣化によりシンチレーターで発光された光量が影響をうける。この大まかな解放としては検出器自体のX線耐性を向上させるというものである。具体的な解決策は以下の2点である 1 プレドーズ(事前放射線暴露)によってアクリルを黄変させておく。こちらはγ線照射サービスの会社により次年度に照射を行ってもらう予定である。しかしながらこれまでの文献からアクリルの黄変度合いが落ち着く見込みは少なく、ある程度のX線照射を行った後もなお黄変が進んでいくだろうと考えている。 2 赤色発光のシンチレーションではアクリル黄変の影響を受けない。自前で赤色発光シンチレーターの作成には成功している。現在は本研究目的に適した配合比の模索を行っているところである。今後は配合比の決定とX線照射耐性を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究にて非常に有効な解決策を見出した。そのためには以前本研究で購入した赤色波長プラスチックシンチレーターが必要であったが、見積もりをしたところ納期6か月、価格は350千円と入手が困難、または今後入手が不可となるリスクを考えた。このような理由から一転国内企業と同様のプラスチックシンチレーターを開発する方向に方策を変えた。結果同等製品の製造に成功した。現在はこのサンプルにて配合調整と実測テストを行っている。費用はこれら開発費用及び購入費用のために次年度に繰り越した。
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