研究課題
本研究の目的は、画像誘導放射線治療(IGRT)の被曝線量予測システムを開発し、患者位置合わせの精度を保持しつつ、患者被曝線量を合理的に低減することである。本研究は、主に動体追跡放射線治療システムSyncTraX FX4(STX)を用いて評価を行っている。これまでの研究成果として、頭部ファントムを用いた基礎評価において、放射線治療装置TrueBeamの放射線照射野中心とSTX画像中心の位置精度が0.5 mm以内と高い精度を有していることを示した。一方、位置合わせ1回あたりの被曝線量については、空気カーマにて低値(<1 mGy)であることを確認した。基礎評価の成果の一部は、米国医学物理学会誌(J Appl Clin Med Phys, 2018)に掲載された。次に、頭部ファントムを用いて、1 mm以内の高い位置精度を保持する撮像条件において、被曝線量が少ない撮像条件範囲を選定した(0.033~0.50 mGy)(2018年10月 第46回日本放射線技術学会秋季学術大会にて報告)。臨床応用前に、医師・診療放射線技師・医学物理士を含む計6名の観察者による画質評価を施行し、観察者間の信頼度が最も高い撮像条件(60 kV/32 mAs)を決定した(2019年4月 第75回日本放射線技術学会総会学術大会にて報告)。2019年度は、左記の撮像条件を臨床応用し、臨床的妥当性を評価した。頭部腫瘍に対して放射線治療が施行された症例群41症例506照合データを対象とし、撮像条件最適化前後の2群間で照合位置精度の比較を行い、両群の位置検出量に有意差は認められず、同等の位置精度であることを示した(2019年11月 日本放射線腫瘍学会第32回学術大会にて報告)。ここまで頭部領域に対する放射線治療において、患者被曝線量の低減が合理的に達成できている。
2: おおむね順調に進展している
研究計画調書に沿って研究開発を進めており、頭部領域に対する放射線治療における患者被曝線量の低減については、臨床応用およびその成果から合理的に達成できたと考える。したがって現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
最終年度となる2020年度は、頭部以外の照射部位に対する患者位置合わせ精度および被曝線量評価に加えて、肺癌に対する動体追跡放射線治療時の被曝線量評価および予測システムの開発を進める。また、2019年度の研究成果については、年度内の投稿を目指して準備を進める。
当初購入予定であった備品に関して、別のソフトウェアへの代替購入を余儀なくされたため。また、演題採択されていた学術大会が延期(次年度Web開催)となったため。2020年度も新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、国内外の学術大会の参加が困難であることが予想される。したがって、次年度使用額については、主に研究解析および英語論文を執筆するために必要なパソコンやソフトウェアの購入、また英語論文に係る校正費および掲載費等に充てる。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件)
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