研究課題/領域番号 |
18K15599
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
山下 典生 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 講師 (90628455)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | MRI / ファントム / 歪み補正 / 信号むら補正 / 脳体積解析 / 認知症 |
研究実績の概要 |
本研究は「1. ファントム画像を用いた3次元T1強調画像の幾何歪み・信号むら同時補正手法の確立」、「2. ヒトを対象とした複数の静磁場強度(0.4-7テスラ)のMR装置を用いた補正効果の実証」、「3. 補正プログラムの開発とウェブ上での無償公開」を実施することによって、MRIを用いた高精度で再現性の高い脳体積解析のシステムを確立し、認知症を中心とした精神・神経疾患の早期・鑑別診断や縦断解析、今後の脳画像研究に大きく貢献する事を目的としている。 本年度は計画通り1と3に関連したファントム解析・補正プログラムの改良や機能追加を行った。まず、解析結果のレポート出力機能を改良し、幾何歪みおよび信号むらの情報を画像化したものをtiff型式とpdf形式で出力できるようにした。この機能により、解析結果の確認が詳細かつ容易に行えるようになった。さらに、これまで画像の入出力は脳画像解析用の標準フォーマットであるNIfTI型式でのみ可能であったが、より簡便かつ実用的に画像補正が行えるように、医用画像の世界標準フォーマットであるDICOM型式での入出力部分を新たに開発し、日常的なワークフローの中で補正処理が行えるようにした。 開発したプログラムを用いて0.4テスラ1台、1.5テスラ2台、3テスラ3台と7テスラ1台の計7台のMR装置を用いて幾何歪みと信号むら補正の有効性を検証する研究を行った。補正処理によって最大1.65mmあった幾何歪みを0.54mm以下に、最大2.89倍の画素値の上昇があった信号むらを1.37倍以下に低減させる事を示し、本成果を第27回日本脳ドック学会総会と第46回日本磁気共鳴医学会大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在順調にファントム解析・補正プログラムの改良を進めており、今年度は解析結果のレポート出力機能の強化と画像入出力部分の機能追加を行った。レポート出力機能の強化については幾何歪みと信号むらの情報を分かりやすく3次元的に画像化したものをtiffおよびPDF型式で出力できるようにした。 画像入出力部分の機能追加では、これまでは脳画像解析用標準フォーマットであるNIfTI型式でのみ入出力が可能であったが、新たに医用画像標準フォーマットであるDICOM型式での入出力部分を開発し追加した。これらの機能追加により、簡便に解析結果の確認が行え、また日常的なワークフローの中での補正処理が可能となった。 開発したファントムの解析・補正プログラムを用いて、0.4テスラ1台、1.5テスラ2台、3テスラ3台と7テスラ1台の計7台のMR装置を使用してファントム画像を撮像し、幾何歪みと信号むら補正の有効性を検証した。最大1.65mmあった幾何歪みを0.54mm以下に、最大2.89倍の画素値の上昇があった信号むらを1.37倍以下に低減させる事を示し、この結果を第27回日本脳ドック学会総会と第46回日本磁気共鳴医学会大会にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は引き続きファントム解析・補正プログラムの改良・機能追加を進め、ファントム内部構造の自動検出手法の改良、サンプリング点間の補間関数、内部パラメータの最適化およびプログラム全体の高速化等を行う予定である。特に、ファントム内容液に気泡が入っている場合、磁化率アーチファクトにより画像上では磁場強度によるが気泡の数倍~十数倍程度の広い範囲で強い信号値の低下が起こり、基準構造物の検出精度が下がる事が分かっているため、当該部位を自動的に認識させて補正処理にデータを使用しないなどの工夫が必要である。 これらの改良、機能追加を行ったプログラムは2020年度のウェブ上での公開に向けてGUI型インターフェースを追加し、マニュアルの整備などを行う予定である。また、現在ファントム画像のみを用いて補正効果の検証を行っているが、2019年度中に倫理委員会を通してヒトを対象とした臨床研究を開始する予定である。当該研究ではボランティア15例、認知症疑い患者30例程度の組み入れを予定しており、補正前後の画像を用いてVoxel-based morphometryや自動ROI解析等の代表的な脳体積解析を行い、ファントムによるヒト画像の補正が脳体積定量値のばらつきを低減させる事を実証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規購入予定だったファントムの品質改良を待ち、年度末に発注したため次年度分の精算となった。これに合わせて、ワークステーション等の購入時期も遅らせたため次年度へ持ち越しとなった。
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