本研究は「1. ファントム画像を用いた3次元T1強調画像の幾何歪み・信号むら同時補正法の確立」、「2. ヒトを対象とした複数の静磁場強度(0.4-7テスラ)のMR装置を用いた補正効果の実証」、「3. 補正プログラムの開発とウェブ上での無償公開」を実施することによって、MRIを用いた高精度で再現性の高い脳体積解析のシステムを確立し、認知症を中心とした精神・神経疾患の早期・鑑別診断や縦断解析、今後の脳画像研究に大きく貢献する事を目的としている。 最終年度は計画通り、3の補正プログラムの開発とウェブ上での無償公開の作業を進めた。これまでに開発した、ファントム画像を解析して基準構造物を自動検出し、設計図上の位置と対応付けて幾何歪みとその補正変形を求めるプログラムと、信号測定の基準となる中心構造物に対する他の基準構造物の信号値の比を求めて信号むらとその補正係数を求めるプログラム、さらにこれらの補正変形、信号補正係数を他の画像に適用するためのインターフェース部分を作成し、一連のプログラムを連結したものを開発した。このプログラムは行列演算ソフトウェアMATLABのコマンドラインから実行できるようにしたが、今後研究者が処理を簡便に実行できるようにするため、世界的に広く使用されている脳画像解析ソフトウェアSPMのツールボックスを新たに開発した。このツールボックスでは、脳画像解析の標準フォーマットであるNIfTI形式で画像の入出力を行い、ファントム画像を入力すると補正パラメータが出力され、ファントム画像またはヒト画像を補正する事ができる。0.4-7テスラのデータを用いて動作検証を行って、マニュアルと共にホームページ上(https://amrc.iwate-med.ac.jp/project/download/)に公開した。
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