研究課題/領域番号 |
18K15602
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小池 直義 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60464913)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膠芽腫 / 低酸素 / 幹細胞 / 2-ニトロイミダゾール / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
本研究は膠芽腫の治療のために、治療抵抗性である低酸素部位をターゲットとした治療法を検討している。低酸素部位特異的に集積する2-ニトロイミダゾール化合物に着目して膠芽腫において放射線との併用、および単剤での治療効果を評価した。 膠芽腫の同種同所移植モデルにおいて、15Gyの照射と2-ニトロイミダゾール化合物を併用することで照射単独に比して生存期間の延長を認め、2-ニトロイミダゾール化合物の放射線増感作用を明らかにした。 in vitroの系で、膠芽腫幹細胞に対して2-ニトロイミダゾール化合物は低酸素環境下では細胞死を誘導することをPI法で確認した。さらにスフェアで評価したところ低酸素特異的に細胞死を誘導していた。細胞死のメカニズムを評価するために、マイクロアレイを用いた発現解析を行ったところ、2-ニトロイミダゾール化合物による細胞死の原因として活性酸素の関与が示唆された。活性酸素の発生源としてミトコンドリアの関与を検討したところ、2-ニトロイミダゾール化合物投与で酸素消費量が減少し、さらに電子伝達系のcomplexⅠ/Ⅱ依存的な酸素消費が減少していることが明らかになった。つまり、2-ニトロイミダゾール化合物はミトコンドリアへのダメージを誘導し、細胞内の活う酸素を上昇させることが示唆された。 引き続いて、膠芽腫を移植した脳を摘出しスライスカルチャーを行い、2-ニトロイミダゾール化合物の効果を確認した。低酸素環境下ではスライスカルチャーにおいても細胞死を効率的に誘導することを確認し、臨床応用に向けての可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低酸素の評価をEF5を使用して評価することに成功したため、低酸素環境特異的な評価が可能となった。マイクロアレイの結果から、ニトロイミダゾールによる細胞死のメカニズムを同定できた。 ex vivoの系においても2-ニトロイミダゾール化合物の低酸素環境下での効果を示すことができ、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro、ex vivo、でニトロイミダゾール単剤の効果を示すことができたため、今後は膠芽腫の同種モデル(in vivo)での効果を検討する。放射線との併用では増感効果を示せたため、単剤での効果、特に低酸素領域に対する効果をマウスの病理組織を用いて評価する。 ミトコンドリア、特にTCAサイクルへの影響を確認するために、2-ニトロイミダゾール化合物投与時のメタボローム解析を行う予定である。 更に、ヒト膠芽腫細胞においても2-ニトロイミダゾール化合物が同様の効果があるかを評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。未使用額は翌年度の動物実験、組織染色検査に充当する予定である。
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