本研究の目的は、個別化治療の実現を支援する放射線治療支援システムを開発することである。現在の放射線治療は、個々の患者毎に個別化された治療が行われるわけではなく、疾患や病期等が決まれば同一の治療が行われている。我々はこの問題を解決するために、AIをより積極的に活用する支援システムの開発を行っている。該当年度は前立腺癌患者と頭頸部癌患者を対象とし、放射線治療後の再発を高精度に予測する機械学習手法を開発した。本手法では、元データを外挿することで仮想データを生成し、放射線治療後の再発予測を行う。第一に、それぞれの患者データセットにおいて臨床情報、放射線治療情報、画像情報などから得られた候補特徴量からElastic Netに基づき予測に有効な特徴量が選択された。第二に、学習データからランダムに抽出した2つのデータを線形補間または線形補外することで仮想データを生成した。生成された仮想データを入力とし、線形重回帰モデルとニューラルネットワークモデルを用いて放射線治療後の再発予測を行なった。仮想データの有無で予測性能を比較したところ、外挿に基づく仮想データを用いることで前立腺癌患者と頭頸部癌患者の放射線治療後の再発予測精度を有意に向上させることが可能であった。開発した手法を用いることで、学習データに含まれない未知の患者データに対して予測精度の向上が見込まれる。本手法は、個別化医療実現のための支援システムとして利用できる可能性がある。
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