研究実績の概要 |
本年度の第一の目標は64列CTを用いた心臓CTの開発と低被ばくプロトコルの確立であった。撮影時の電圧を100kVpと低くし、sequential撮影を行うことで、心臓CT全体の平均被ばく量を7.3mSvに抑えることができた。これは当初の目標をほぼ達成する低被ばくであり、特にdynamic CTPの被ばく量が平均2.5mSvであり、これまで報告されている中でも最小の水準を達成している。線量が少ないことで画質が低下することが懸念されたが、従来の逆投影法に変わる逐次近似再構成法でありSAFIREを併用することで、十分な画質が担保できた。 次に、確立した心臓CTの診断能を検討した。心臓CT撮影を行った後、カテーテル検査を施行した44名で冠動脈狭窄の有無と心臓CTから計算される心筋血流量の関係を調べた。有意狭窄(カテーテルで50%以上の狭窄)を有する領域では、残りの領域と比較して有意に血流低下を認めた(相対的血流量:0.84±0.32, 95%信頼区間:0.77-0.90, p <0.001)。また、冠動脈の有意狭窄の診断能は冠動脈CTのみと比較して、dynamic CTPを加えることで、82%から87%へと有意に(p <0.05)診断精度が上昇した。従って、開発した心臓CTは低被ばくでありながら、十分な診断能を有していることが示された。 さらに、糖尿病患者で罹病期間と背景心筋血流量の関係を検討した。この結果、罹病期間が8年を超えると、これより短い患者と比較して有意に心筋血流が低下していた(1.11±0.35 vs 1.28±0.27, p <0.01)。従って、心臓CTを用いることで糖尿病による微小循環機能の低下が評価できる可能性が示唆された。
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