研究課題/領域番号 |
18K15607
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
恒田 雅人 東京女子医科大学, 医学部, 特任助教 (60800753)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プラスチックシンチレータイメージングシステム / 4次元線量分布 / 高精度放射線治療 / 患者個別QAQC |
研究実績の概要 |
生理的体動を伴う腫瘍、主として肺がんや肝がんに対する高精度放射線治療の施行において4次元線量分布の計測は、照射中の時間構造を解析することができる手法として期待されている。本研究では、プラスチックシンチレータと増感紙、冷却式CCDカメラを用いて4次元線量分布計測システムを構築する。生じた発光をCCDカメラで計測し、取得した静止画から3次元線量分布を再構成する。照射中の連続した静止画(動画)を取得することで4次元線量分布の計測・再構成が可能となる。本年度は、小型のプロトタイプシステムを開発した。単純な正方形照射野を用いて照射した際に取得される静止画を解析することで基礎検討とした。本年度は下記の成果を得た。 (1) 増感紙からの発光より照射野形状の取得、プラスチックシンチレータからの発光より深さ方向の線量分布情報の取得が可能であった。これらのデータから3次元線量分布を再構成した(計測3Dデータ)。 (2) プラスチックシンチレータ内で生じた発光量と線量の関係は線形であった。放射線治療計画装置で計算した線量分布と計測3Dデータを比較すると、照射辺縁がなまった形状であった。これは光の拡散等の影響であることが示唆された。 (3) 増感紙部分に照射野形状が明瞭に描出されるため、放射線照射位置の計測も可能であった。 これらの結果から、静止画から3次元線量分布が計測可能であることが示され、すなわち連続した静止画データを用いることで4次元線量分布が計測可能である。照射辺縁がなまった形状になることに対して、再構成アルゴリズムの中に光の拡散補正処理をを導入する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、小型のプロトタイプシステムを開発し、基礎試験を行うことができた。しかしながら、multi-leaf collimator(MLC)で成形される複雑な照射野形状に対応可能であるかは不明であり、2019年度早々に試験する必要がある。 また、患者個別QAQCを目的に放射線治療計画時の輪郭データ(RT-structure)を展開できるようなプログラムを試作した。 2018年度に得た知見を元に、測定データに対する再構成アルゴリズムの改良と計測体型の最適化を行い、実際の治療プランを用いた4次元線量分布の再構成を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
【光の拡散補正を含む再構成アルゴリズムの考案】 逐次近似法を用いたアルゴリズムを開発する。放射線治療計画装置により正方形照射野で線量計算されたデータとそれに対応する測定データから再構成した3次元線量分布(計測3Dデータ)を比較し、繰り返し演算を行う。正方形照射野サイズごとに必要な繰り返し演算回数を決定する。次に、複雑な照射野形状のプランの等価正方形照射野サイズを算出し、そのサイズに見合う演算回数で補正処理を行う。 【測定条件の最適化】 被写界深度やスケーリング係数(1ピクセルあたりの長さ;mm/pixel)を考慮し、撮像距離とレンズの焦点距離、F値を最適化する。また、増感紙とプラスチックシンチレータで生じる発光のSN比の関係からCCDカメラの露光時間を最適化する。場合によっては、部分的にNDフィルタの使用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
従来より研究室にて所有していたものを使用して4次元線量分布計測システムの検出器部分(プラスチックシンチレータと増感紙)を試作することができた。試作したプロトタイプシステムを用いて基礎試験を行った。この知見を元に、2019年度に臨床使用可能な検出器の開発を実施する予定である。
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