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2018 年度 実施状況報告書

転移性がんの核医学診断・治療を可能とするCD36標的リポソーム製剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K15609
研究機関神戸薬科大学

研究代表者

宗兼 将之  神戸薬科大学, 薬学部, 特任助教 (80804806)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワードCD36 / リポソーム / セラノスティクス
研究実績の概要

近年、長鎖脂肪酸や酸化LDLの受容体であるCD36が、がんの転移に必須の分子であることが明らかにされ、CD36を標的とした分子設計が、がんの転移箇所や転移能を評価する有効な手段となり得ると考えられた。そこで本研究では、特定の分子の分布状態を非侵襲的に体外から可視化できる核医学イメージング技術に着目し、CD36を標的とした核医学イメージング用診断薬の開発を目的とした。診断薬として、CD36に高親和性を有する酸化リン脂質から構成されるリポソームを作製し、CD36特異的にがんに集積するかを検討する。さらに、ナノ粒子中に抗がん剤を封入することで、がんの薬物治療を検討する。以上の検討から、診断 (Diagnosis) と治療 (Therapeutics) を同時に行えるセラノスティクス(Theranostics) ナノ粒子を構築する。
平成30年度は、CD36への特異的な取込み評価を実施可能で、なおかつ、がんの転移を評価可能なCD36および蛍光タンパク質強制発現細胞株の樹立、並びに、酸化リン脂質含有リポソームのIn-111標識法の確立を行った。CD36強制発現細胞の樹立とIn-111標識法の確立ができたため、現在、In-111標識酸化リン脂質含有リポソームの細胞内取込み試験を行い、最適な脂質組成を検討している。細胞取込み試験で良好な結果が得られたリポソームに関しては、担がんマウスにおける生体内分布を評価する予定であるが、樹立した細胞株を用いて担がんマウスを作製可能であること、また、がん由来の蛍光をマルチスペクトルCCDカメラにより検出可能であることを確認している。今後、良好な細胞内取込みを示した酸化リン脂質含有リポソームを用いて、がんへの分布を評価するとともに、転移がんへの集積も併せて検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、CD36に高親和性を有する酸化リン脂質含有リポソームを作製し、放射性核種による標識を行うことで、CD36を高発現する転移性がんを診断できる放射性医薬品の開発を行う。また、抗がん剤を内封させることで、核医学診断のみならず薬物治療も可能なリポソーム製剤を開発する。平成30年度は、以下の成果を得た。
(1) CD36および蛍光タンパク質強制発現細胞の樹立:酸化リン脂質含有リポソームのCD36への特異的な取込みを評価するためにCD36を強制発現させた細胞株(CD36+細胞)をトランスフェクション法により樹立した。その際、転移がんの位置を評価するために蛍光タンパク質も同時に発現させた。また、樹立した細胞をヌードマウスに移植して担がんマウスを作製し、がん由来の蛍光をマルチスペクトルCCDカメラで検出可能であることを確認した。
(2) 酸化リン脂質含有リポソームのIn-111標識法の確立:最適な脂質組成を検討するため、種々の組成の酸化リン脂質含有リポソームを作製し、In-111による標識を検討した。いずれの組成のリポソームにおいてもトランスキレーション法を利用して、高い放射化学的収率、放射化学的純度でIn-111標識が行えることを確認した。
以上のように、細胞内取込み試験により良好な集積性を示す酸化リン脂質含有リポソームを見出せれば、速やかに動物実験に移行できる準備ができているため、研究はおおむね順調に進行していると評価できる。

今後の研究の推進方策

平成30年度は、CD36への特異的な取込み評価を実施可能で、なおかつ、がんの転移を評価可能なCD36および蛍光タンパク質強制発現細胞株の樹立、並びに、酸化リン脂質含有リポソームのIn-111標識法の確立を行った。
CD36強制発現細胞の樹立とIn-111標識法の確立ができたため、現在、In-111標識酸化リン脂質含有リポソームの細胞内取込み試験を行い、最適な脂質組成を検討している。平成31年度も継続して細胞内取り込み試験を実施し、最適な脂質組成および酸化リン脂質の導入率を明らかにする。また、抗CD36抗体を用いた阻害実験を行うことで、CD36への特異性を確認する。CD36への特異性が確認できた酸化リン脂質含有リポソームに関しては、担がんマウスにおける生体内分布を評価し、CD36を高発現するがんへの集積性を評価する。また、転移したがんに酸化リン脂質含有リポソームが集積するかどうかを評価するために、がん転移モデルを作製し、In-111標識酸化リン脂質含有リポソームの集積性を評価する。転移したがんへの集積性の評価は、樹立したがん細胞由来の蛍光とIn-111標識酸化リン脂質含有リポソームの放射能を指標に行う。CD36を高発現するがんへの良好な集積性を確認できた場合は、ドキソルビシン等の抗がん剤を内包させ、がんの縮小効果を評価することで、核医学診断のみならず、薬物治療も可能なリポソーム製剤となり得るかを検証する。

次年度使用額が生じた理由

CD36および蛍光タンパク質強制発現細胞を数種類の細胞株で樹立したが、担がんマウスを作製するとxenograft由来の蛍光が確認できない細胞株があり、担がんマウスにおいて蛍光を指標にがんの位置を確認できる細胞株を樹立するのに時間を要してしまった。そのため、平成30年度に、酸化リン脂質含有リポソームのマウス生体内分布の評価を行えていない。当初は、動物実験にかかる費用を計上していたため、次年度使用が生じた。

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公開日: 2019-12-27  

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