本研究では、特定の分子の分布状態を非侵襲的に体外から可視化できる核医学イメージング技術に着目し、がんの転移箇所や転移能を評価するための新たな手法として、がんの転移に必須の分子であることが近年明らかにされたCD36を標的とした核医学イメージング用診断薬の開発を目的とした。診断薬として、CD36に高親和性を有する酸化リン脂質から構成されるリポソームを作製し、CD36特異的にがんに集積するかを検討する。さらに、ナノ粒子中に抗がん剤を封入することで、がんの薬物治療を検討する。以上の検討から、診断 (Diagnosis) と治療 (Therapeutics) を同時に行えるセラノスティクス(Theranostics) ナノ粒子を構築する。 当該年度は、前年度に作製した酸化リン脂質含有リポソームへの薬物の内封と酸化リン脂質含有リポソームのCD36強制発現細胞への取込みを評価した。薬物としてドキソルビシンを選択し、リモートローディング法により酸化リン脂質含有リポソームへの内封を検討したところ、ドキソルビシンを高効率で内封できることが確認できた。以上より、前年度のIn-111による放射性標識法の確立と併せて核医学診断と薬物治療を同時に達成できるセラノスティクスナノ粒子の構築が達成できた。しかしながら、CD36強制発現細胞への酸化リン脂質含有リポソームの有意な取込み上昇は確認できず、酸化リン脂質によるCD36に対する標的化の効果が発揮される脂質組成・作製方法を再検討している。
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