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2018 年度 実施状況報告書

クリプトーム解析を用いた陽子線に対するがん細胞応答の網羅的解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K15612
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

北條 秀博  国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (60638774)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードトランスクリプトーム解析 / 陽子線治療 / 食道癌
研究実績の概要

粒子線治療の一つである陽子線は、その生物学的効果が1.1倍程度とX線とほぼ同等と考えられている。しかし物理学的性質がX線と大きく異なることは知られており、申請者は陽子線の照射野内で生物学的効果が不均一である可能性を報告した。放射線はDNA損傷を介し、生化学的な過程を経て生物学的効果を誘導することが明らかとなっており、DNA損傷の形式、依存する修復経路はX線と陽子線で異なることが報告されている。しかし、その詳細な研究は限られているのが現状である。そこで、本研究ではX線と陽子線の細胞死に至る生化学的経路の違いを明らかにする事を目的とした。
その方法として、食道癌細胞株に対し、X線、陽子線照射を行い、X線照射後、陽子線照射後の遺伝子群の発現状況を、次世代シークエンサーを用い、RNAシークエンシングのデータから、トランスクリプトームによる遺伝子転写産物(mRNA)の網羅的に解析した。今まで、陽子線に対する細胞応答に関する次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム網羅解析の報告はなく、本研究課題の成果が得られることで、X線と陽子線の細胞死に関わる経路の相違や関与する重要な分子や遺伝子が明らかになると考えた。その結果から、これらの標的分子や遺伝子の役割や機能を明らかにした上で、陽子線治療に特異的な阻害剤開発のシーズに繋げたいと考えている。
細胞死に至るシグナル伝達経路の解析を行い、X線照射後と陽子線照射後で、発現が変動する遺伝子群をトランスクリプトームによるmRNAの網羅的解析でそれぞれ同定し、DNA損傷とその修復プロセスを含めた細胞死に至る分子メカニズムの違いを検討した。
その結果、X線, 陽子線共に免疫応答に関連する遺伝子変動が確認され、中でも治療標的遺伝子であるPD-L1の放射線による誘導は、陽子線でより顕著な発現誘導が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

食道癌細胞株OE-21, KYSE-30, 70, 450, 510, 1260, 1440を用いて、X線、陽子線照射後のRNAシークエンシングを行った。更に、IPathwayGuideによる細胞死に至るシグナル伝達経路の解析を行った。更に、X線照射後と陽子線照射後で、発現が変動する遺伝子群をトランスクリプトームによるmRNAの網羅的解析でそれぞれ同定し、DNA損傷とその修復プロセスを含めた細胞死に至る分子メカニズムの違いの検討を行う事が出来た。このため、概ね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

食道癌細胞株OE-21、450に対し、X線、陽子線照射後のタイムコースでRNAを抽出、シークエンシングを行い、その違いについてさらに検証する。発現が変動する遺伝子群をトランスクリプトームによるmRNAの網羅的解析でそれぞれ同定し、DNA損傷とその修復プロセスを含めた細胞死に至る分子メカニズムの違いを再度検討する。分野内外で、実験手法や検討方法等、助言、指導を受ける予定である。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
国際学会での発表も予定していたが、研究の進捗を優先させたため、次年度に繰り越すこととなった。
(使用計画)
追実験が必要となる可能性があり、試薬やガラス器具、プラスチック器具が更に必要となることが予想される。また、さらなるシークエンス、解析を行う事も考えておりその費用も必要となる。更に、国内、国際学会参加費、論文投稿に際し、校正費等にも使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] トランスクリプトーム解析を用いた陽子線に対するがん細胞応答の網羅的解析2018

    • 著者名/発表者名
      北條秀博、影山俊一郎、杜君顔、茂木厚、中村匡希、中村直樹、全田貞幹、木部優一、奥村真之、秋元哲夫
    • 学会等名
      第47回放射線による制癌シンポジウム

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公開日: 2019-12-27  

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