研究実績の概要 |
放射線は癌細胞に直接Type Iインターフェロン応答や、MHC class遺伝子発現等の免疫応答を誘導するが、これらは主にDNA損傷を起点とするbiological signalにより制御されることが報告されている。陽子線、重粒子線はX線と比較し、DNA損傷の形態が異なるが、その結果生じる免疫応答やその制御メカニズムの違いについては不明な点が多い。我々はこれまでに食道扁平上皮癌細胞株KYSE450ではX線によりDNA損傷-STINGを介した免疫応答が誘導されることを報告した。今回陽子線、重粒子線の誘導する免疫応答を比較解析する目的で研究を行った。臨床で用いるRBEが陽子線:1.1, 重粒子線:2.38であることを考慮し、食道扁平上皮癌細胞株KYSE450に対してそれぞれ15.0, 13.6, 6.8 GyのX線、陽子線、重粒子線照射を行い、照射後6h, 24h, 72h, 5day, 7day時点でmRNA seqによる遺伝子発現解析を行った。またSTING, STAT1 knockout cellでの応答についても比較検討した。放射線照射後6時間後に変動する遺伝子、biological pathwayは3つの線種で大きく異なっていた。一方で24時間後から5日かけてその共通性は高くなり、免疫応答関連遺伝子の発現も類似していた。陽子線、重粒子線照射でもSTING, STAT1ノックアウト細胞株での免疫応答は大きく低下していた。
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