研究課題/領域番号 |
18K15615
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山口 英俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (10783194)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アラニン線量計 / 放射線治療 / IMRT / 強度変調放射線治療 / 線量測定 / モンテカルロシミュレーション |
研究実績の概要 |
今年度は、アラニン線量計を用いたIMRTの線量測定の実現のために、アラニンペレットの角度を変化させて実験及びシミュレーションを行った。IMRTでは、多方向の角度から放射線を照射することで、複雑な線量分布を持つ治療を実施している。そのため、現実的なIMRTの線量測定を行う際には、異なる照射角度における線量計の応答の変化が重要となる。 昨年度製作した、アラニンペレットを十字に5つ配置することができ、角度依存性を検証することができるPMMA製のホルダーを、モンテカルロシミュレーションで再現し、照射角度ではなく治具及びペレットの角度を30度ずつ変化させて、アラニンペレットに付与されるエネルギーの計算を行った。ホルダーは水ファントム内で回転させた。入射ビームとして、6, 10, 15 MVの高エネルギー光子線を使用した。また、PMMA製のホルダーがある状態とない状態の両方について計算を行い、ホルダーの影響を確かめた。 初期位置であるアラニンペレットがすべて同じ深さに位置する場合(0度)と比較して、ホルダーが90度または270度回転したときに、エネルギー付与の差が最も大きくなった。その差は6 MVでは約3.4%、10 MVでは約4.9%、15MVでは約5.6%であった。ホルダーが90度または270度回転したとき、アラニンペレットはビーム方向に対して最も幅広い範囲で位置していることになるため、深さ方向の線量分布の影響が現れていると考えられる。また、ホルダーがある状態とない状態の差は、6 MVでは約0.79%、10 MVでは約0.72%、15MVでは約0.61%であった。 実験においても角度依存性を検証するため、水ファントムとPMMA製のホルダーを使用して、ホルダー角度を30度ごと変化させて6, 10, 15 MVのビームをそれぞれ照射した。実験結果については現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は実験に必要なホルダー等の製作や、基本的なシミュレーションを行った。本年度はそこから更に発展させ、IMRTの線量測定に重要となる角度依存性について、シミュレーション及び実験で検証した。シミュレーションの結果、アラニンペレットが90度または270度回転したときに、角度依存性が最も大きくなることが判明し、その角度依存性は無視できない程度であることがわかった。そのため、複数の角度からアラニン線量計に照射したときに、本年度明らかにした角度依存性を用いて、線量測定値を補正することができるかどうか検証している。もし補正が正しく行うことができないようであれば、角度依存性のない配置による線量測定を実施する。アラニン線量計また、ホルダーの影響は1 %未満であることがシミュレーションによって明らかとなった。リニアックを使用して角度依存性を検証する実験を行った。実験結果は現在解析中である。 現在までに、当初の研究計画の2/3程度の内容を遂行しており、研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、実際のIMRTの線量測定に使用する、固体ファントム中での照射実験を主に行う。まずは、水ファントム中と固体ファントム中での水吸収線量の差を実験的に確かめ、補正係数を明らかにする。その後、アラニンペレットを固体ファントムに固定して実験を行い、水吸収線量測定を正しく行うことができるかどうか検証する。本年度得た成果から、十字形にアラニンペレットを配置する場合には、角度依存性が大きいことがわかった。そのため、異なる複数の角度からアラニン線量計に照射したときに、照射角度さえわかっていれば、角度依存性を補正することで線量測定が可能かどうか確かめる。最終的に、可能であれば医療機関などと連携して、IMRTの治療計画による線量と、アラニン線量計による測定値が同等な値となるかどうか検証し、アラニン線量計によるIMRTの第三者出力線量評価が可能かどうか確かめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究初年度の本科研費予算内で、本年度使用した実験用のホルダーなどを購入したため。繰り越した分は、固体ファントムの加工、大型計算機使用量、実験や学会発表などのための旅費などに充てる予定である。
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