子宮頸癌放射線治療のための新たな強度変調腔内照射用アプリケータの開発

2018 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 18K15620
• 研究機関: 山形大学
• 研究代表者: 宮坂 友侑也 山形大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90812884)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 子宮頸がん放射線治療 / 小線源治療 / タンデムオボイドアプリケータ / モンテカルロシミュレーション

研究実績の概要

本研究では従来まで用いられている子宮頸がん小線源治療用タンデム・オボイドアプリケータに代わる新たなタンデム・オボイドアプリケータの開発を実施している。このアプリケータの従来に比較した利点はこれまでは不可能であった不整形な腫瘍にもフィットした複雑な形状の線量分布を作成可能なことである。これを実現するために考案したのは既存のアプリケータの内部に金属遮蔽体を入れその周辺部に線源を通過させる穴を作るということである。ただし、この金属遮蔽体の形状は何通りも考えられ、不正形な線量分布を形成可能な最も効率的な設計を行うべきである。また、その金属の種類によっても遮蔽能力および強度変調線量分布の形成能力には変化が生じることが予測される。また素材に関しては現在本邦の子宮頸癌小線源治療で主流となりつつあるCTベースの治療計画に対応できるように、CTベース治療計画においても治療計画の障害となりうるアーチファクト等のなるべく発生しにくい金属での開発を進めていくことが求められる。今年度はその形状および素材の選定を行った。また考案した金属遮蔽体が本当に目的の線量分布を作成可能かを検証するため必要がある。その検証のためにはモンテカルロシミュレーション実施することを計画している。このモンテカルロシミュレーションにはフリーで使用可能なモンテカルロシミュレーション用プログラムPHITSを使用することとした。現在は実際の遮蔽体の形状の検討およびモンテカルロシミュレーションでの考案した金属遮蔽体の再現を実施中である。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

アプリケータ内部に挿入予定の遮蔽体の検討を行っているが、検討予定の使用金属と形状および金属周囲にあける穴の数の組み合わせは無数に存在する。これら組み合わせの検討に時間を要しており、今のところ素材と形状の決定には至っていない。具体的な要件として素材として用いられる金属にはCT治療計画で使用可能なようにCT画像取得時にアーチファクトを可能な限り引き起こさないこと、その上で放射線遮蔽能力が高いことが求められる。また、形状としては実際に選択した金属が加工可能な形状でありかつ可能な限り放射線遮蔽能力の高い形状を考案することが必要である。今後モンテカルロシミュレーションを経てこれらの要件を満たしうる組み合わせを決定してく方針である。

今後の研究の推進方策

今年度は引き続きモンテカルロシミュレーションを用いて最適なアプリケータ内部遮蔽体の形状の検討及び、素材の検討を継続する。また、この結果から形状および素材の組み合わせを決定する。その次の段階として考案したアプリケータが臨床的にも価値のあるものとなりうるかの検討へ進む。決定したアプリケータ形状により形成可能な線量分布を実際の治療で用いた治療計画CT画像上に再現する。この治療計画CT上でのシミュレーションと実際の臨床で実施された治療時の線量分布とを比較することにより今回開発したアプリケータが臨床上従来までのものと比較し優位な能力をもつデバイスとなりうるのかを評価する。

次年度使用額が生じた理由

本研究で使用予定のソフトウェアなどは安価な類似品で代用可能であることが分かったたため、次年度へ繰り越した。また、情報収集のために予定していたいくつかの学会参加を見送ったため旅費に未使用額が生じた。引き続き本研究を進め2019年度以降の研究成果の発表のための学会発表および論文投稿の際の費用として使用する予定である。