2018年度に引き続き,本研究の目標,は磁気共鳴(MR)画像を使って放射線治療計画を立てる(MR-only simulation)過程の線量分布計算の精度検証に必要なファントムを作成することであり,最初の段階としてファントムに最適な材料を選定することに重きを置く。 現行のMR-only simulationによる治療計画におけるキー画像でもあるM R-D I X O N画像で分別して照射線量計算に用いられる5つの組織のうち「空気」を除く「脂肪」「海綿骨」「その他の組織」「緻密骨」はそれぞれ,-86,198,42,949のHU値を示す。2018年度に探索的に検証した材料の中から今回ターゲットとしている「脂肪」「海綿骨」「緻密骨」「その他の組織」のH U値に近かった材料として,NYLON12+CF,Tango+sup.,アジラス,デジタルABS+,ultem9085,PLA,tough PLA,ナイロン,PP,アクリルウレタン系透明樹脂,アルミニウムなどが挙げられた。さらにH U値に近づけるための複数の材料の配合率を検証した。さらに材料の印刷方法を変えて材料の密度を変化させることでそれぞれのH U値を微調整して目的のH U値に近づけた。しかしながら,「海綿骨」に近い材料だけは今回の研究期間で候補を挙げることができなかった。 また,本研究の副産物として,上記のM R-D I X O N画像を高画質に得ることを検証した過程でMRファントムの作成にも着手し,今までにない新しいファントム作成方法を開発した。このファントム作成技術を用いるとヒトの全身の全ての組織や臓器のT1およびT2値を連続値として作成することでき,本研究以外にもMRIの様々な分野の研究への貢献が期待できる。特許申請の準備中である(2020年7月申請完了予定)。
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