研究課題/領域番号 |
18K15623
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古田 寿宏 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20597885)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 新規MRI診断法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、SPIOを用いる新規MRI診断法により、肝癌の放射線治療における照射域の早期描出が可能かどうかを調べることである。これまでに、研究代表者は、正常肝モデルラットや肝癌モデルラットにおいて、SPIOを用いる新規MRI診断法により、30~70 Gyの放射線を単回照射すると、4~7日後のMRIにおいて、照射域が低信号となることを見出した。 研究計画に沿って、共同研究機関である国立がん研究センターにて、動物実験倫理委員会の承認を得た上で、以下の動物実験を行った。正常モデルラットを用い、SPIOを投与したのち、20Gyの単回放射線照射を肝臓に対して行い、9.4T装置によるMRI撮影を行った。 結果、照射7日後のMRIにおいて、肝臓の照射域は非照射域に比べて低信号を示した。LQモデルによる線量換算上、腫瘍を対象としてα/β=10とすると、1回線量20 Gyは、分割照射における一回2 Gy×25回の50 Gyに相当する。肝細胞癌への照射線量で報告が多いのは50 Gy前後であるため、この結果は、臨床とほぼ等価な照射線量で肝における照射域の描出が可能であることを示している。組織学的には照射域の鉄沈着数が非照射域に比べて多く、照射域においてはクッパー細胞によるSPIOの分解が正常肝実質で起こる速度よりも遅くなり、磁化率効果の高い鉄粒子が残存した結果、非照射域に比べて肝信号の回復が遅延して見えたものと考えられた。 10 Gyまで線量を減らしても照射域の早期描出が可能かどうかを確かめることを予定していたが、30~70 Gyの放射線を単回照射した場合に比べ、20Gyの照射では照射域の信号低下の度合いが少ないため、鋭敏に磁化率効果を捉えるT2*強調画像以外の方法、例えばSWI等、の利用も考え、次の実験を計画している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 10 Gyまで線量を減らしても照射域の早期描出が可能かどうかを確かめることと、SPIO製剤の最適な投与量の調査、臨床試験への移行が未施行であるからである。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実施計画のうち、10 Gyまで線量を減らしても照射域の早期描出が可能かどうかを確かめることと、SPIO製剤の最適な投与量の調査を続けて行うことが妥当であると考える。 ただしこのために、鋭敏に磁化率効果を捉えるT2*強調画像以外の方法(MRI撮影法・画像処理方法)を模索しており、これの目処をつけることを第一に考えている。 臨床試験を目指しているため、動物実験における十分な検証を行うことが、研究の継続可能性において重要である。これらの実験から得られる結果を基にして、ボランティア患者を対象とした、実行可能性の研究を実施すべきかどうかを判断する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の目的の達成度はやや遅れており、そのため物品費などの実支出額が少なく、次年度に使用する予定の研究費が生じている。遅れている分の動物実験に必要な物品・造影剤・試薬の他は、臨床研究に必要な物品・造影剤、学会での成果発表のための旅費、謝金など、当初の予定通りに研究費を使用することを計画している。
|