研究課題
本研究はRadiomics (レディオミクス) に基づく放射線治療期間内の患者統計的変動を考慮した予後予測システムの開発を目的とする.本年度は放射線治療前における患者統計変動に着目し,放射線治療前に精査目的で取得された医用画像を収集しデータベースを構築した.さらに,放射線治療前の画像から抽出されるRadiomics特徴量を用いて予後に関連する因子(悪性度,遺伝子情報)を予測可能であるか調査した.解析は神経膠腫と肺がんを原発とする転移性脳腫瘍を対象とした.放射線治療前に精査目的で撮像された神経膠腫73例,肺がん転移性脳腫瘍40例のMR (magnetic resonance) 画像を収集し治療前の患者変動を含んだ医用画像データベースを構築した.収集した各患者のMR画像はT1強調,T2強調,拡散強調など複数のシーケンスで撮像されたもので構成した.データベース内の全ての画像上の腫瘍領域内からRadiomics特徴量を抽出した.Radiomics特徴量として腫瘍のサイズ/形状,腫瘍内の信号強度やテクスチャなどを定量化した特徴量を採用した.次に機械学習を用いて抽出したRadiomics特徴量から神経膠腫では悪性度,転移性腫瘍では原発巣である肺がんのEGFR (epidermal growth factor receptor) 遺伝子変異の予測モデルを構築した.機械学習はサポートベクターマシン,ニューラルネットワーク,ランダムフォレストなど様々な手法を適用した.構築した予測モデルは交差検証にて評価を行い結果,治療前に取得された画像から抽出されるRadiomics特徴量を用いて神経膠腫の悪性度と転移性脳腫瘍に基づく原発肺がんの遺伝子変異を十分な精度で予測できる可能性を示すことができた.
2: おおむね順調に進展している
放射線治療前に精査目的で撮像された医用画像を収集し,治療前の患者変動を含んだ画像データベースを構築した.そして,データベース内の画像から抽出されるRadiomics特徴量を用いて予後に関連する因子の予測が実現可能か検証し,結果として神経膠腫の悪性度と転移性脳腫瘍に基づく原発肺がんの遺伝子変異を十分な精度で予測できる可能性を示せた.
対象とする疾患の幅を拡げ症例数を増やすことで本年度取り組んだ放射線治療前に撮像される医用画像からRadiomicsに基づく予後因子予測法の精度を上げる予定である.また,放射線治療期間内における毎回の治療前にIGRT (image-guided radiation therapy) を目的として撮像されるCBCT (cone-beam computed tomography) 画像からRadiomics特徴量を抽出し,治療期間内における特徴量の経時的な変動と予後との相関関係について調査する予定である.
当初,大規模な医用画像データベースを基にRadiomics特徴量抽出,機械学習を用いた予測モデルの構築を高速度・効率に行うための高性能な大型ワークステーションの購入を予定していたが,本年度構築した画像データベースに基づく解析では質的・量的に既存のワークステーションで十分に処理を行うことができたため本年度は解析手法の確立に努め,大規模データベースを用いて解析を進める次年度に購入を延期した.次年度に繰り越した予算は前述の通り大規模データベースを用いた解析を効率良く行うための並列処理を可能とするGPU (graphics processing unit) 搭載の高性能大型ワークステーション購入に使用する.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
医学物理
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http://u-tokyo-rad.jp/index.html