研究課題/領域番号 |
18K15630
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
椋本 宜学 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50736618)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医学物理学 / 四次元放射線治療 / 高精度放射線治療 / 呼吸性移動 |
研究実績の概要 |
難治性である肺癌、膵臓癌をはじめとする胸腹部腫瘍に対する放射線治療では、腫瘍の呼吸性移動範囲を包含する照射法が一般的だが、呼吸性移動の大きい腫瘍に対しては正常組織の被曝線量増大による有害事象の発生が問題視されている。四次元の放射線治療計画では腫瘍の呼吸性移動量を四次元CTを用いて定量化し、移動範囲を包含する形で照射野が設定される。強度変調放射線治療は様々な方向から極小照射野を複雑に組み合わせて線量分布の勾配や形状を自由に変化させる照射技法だが、時系列的に不均一に放射線が照射されるため、腫瘍動体下では照射されるタイミングが異なることにより意図せぬ過大線量や過小線量が投与される危険性がある。本研究は、腫瘍動体下における線量分布の不確定性を明らかにすること、および計画時における放射線の三次元強度分布を解析し、腫瘍動体に頑強な照射野の組み合わせとなるよう、多方向からの極小照射野を入れ替えて治療計画を再構築するシステムを開発することを目的とする。 平成30年度は、治療計画内の動的装置情報(MU/deg、Dose Rate、MLC形状、Gantry位置、時間)、腫瘍の動体情報(位置、時間)を基に、腫瘍動体が強度変調された線量分布に与える影響を四次元的に評価可能なシステムを開発した。肺癌、膵臓癌患者において、処方線量とArc数の異なるプランに対して、呼吸の初期位相の違いを考慮した患者固有の腫瘍動体が線量分布に与える影響を解析した。その結果、腫瘍動体と装置の動体による誤差は、処方線量、Arc数が増加するほど、分散されて低減されることにより頑強性が向上することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画情報から腫瘍動体と装置動体を考慮して線量分布を再計算するシステムを開発し、肺癌、膵臓癌患者における腫瘍動体と装置動体による線量分布の変化を解析した。研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍動体と装置動体による線量分布の変化の解析に関しては、今後も継続して実施する。次年度は当初の計画通り、初年度で得られた動体下の線量分布不確定性データに基づき、腫瘍動体に頑強な四次元放射線治療システムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度末に最終使用した英文校正費の残額として、為替変動分を見込んで見積もっていたため、少額の直接経費の残額(1,930円)が生じた。本研究費はH31年度の論文投稿の際に使用する。
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