難治性である肺癌、膵臓癌をはじめとする胸腹部腫瘍に対する強度変調放射線治療では、腫瘍動態下において意図せぬ過大線量や過小線量が投与される危険性がある。 本研究は、腫瘍動体下における線量分布の不確定性を明らかにすること、および腫瘍動態に頑強な四次元治療計画法を開発することを目的とした。 2018年度には腫瘍動態が強度変調された線量分布に与える影響を四次元評価可能とするシステムを開発し、患者固有の腫瘍動態と治療装置の動態下における線量誤差は、処方線量、Arc数が増加するほど、誤差が分散されて頑強性が向上することを明らかにした。 2019年度には回転型強度変調放射線治療において照射野形状を単純化する新たなシステムを臨床導入し、照射野形状単純化は強度が強すぎると治療計画の質の低下(治療計画上の線量分布の悪化)を引き起こす一方で、低度の単純化であれば治療計画の質には影響を及ぼさず、腫瘍動態に対する頑強性が向上することを明らかにした。 本研究成果は3rd ESTRO Physics workshop: Science in developmentのPlan Quality assessment: dose distribution metrics and robustnessにて報告し、高い評価を得た。ESTRO Physics workshopは、特定の研究課題に関して世界中から少数の研究者を集めて最先端の研究成果を報告し合い、その成果と現状の課題に関してひざを突き合わせて討論することで新たな成果を生み出すことを目的としている。Workshopを通じて治療計画の質と複雑性、頑強性に関して、実情調査の実施と提言書を作成することが決定し、本研究代表者も調査項目の内容決定に関与する15人のうちの1人として、また提言書作成に関与する6人のうちの1人として貢献した。
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