研究課題/領域番号 |
18K15631
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
立川 章太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (40816550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線治療抵抗性 / エピジェネティクス / エピトランスクリプトーム / RNAメチル化 / METTL3 / alternative splicing |
研究実績の概要 |
遺伝子変異と同様にエピジェネティック異常も発がんの過程や病態進展に重要である。従来のDNAメチル化やヒストン修飾に加え、特にDNA高次構造/クロマチンループは病態進展の過程でダイナミックに変化し得るため、放射線抵抗性獲得の過程においても多くの遺伝子発現に影響を与える。またエピジェネティック異常は遺伝子変異とは異なり可逆的であると考えられており、異常な状態を正常化することで新たな治療標的となり得る。本研究では放射線抵抗性獲得に関するエピジェネティック異常を明らかにし、将来の放射線治療臨床を見据えた基礎作りをするため、放射線抵抗性細胞株を用いてエピジェネティクス解析を行うことでDNA高次構造に関連するタンパクであるCTCFの局在異常の存在、それによるDNA高次構造の変化と放射線抵抗性との関連を解明する。 本研究では特に放射線治療抵抗性である膵癌の病態について研究することとした。これまでに筆者らの研究グループでは、RNAメチル化の変化が大腸癌細胞株において化学療法抵抗性に関わっていることを明らかにしてきた。RNAのメチル化はmRNAだけでなく、lncRNAの発現にも影響することが報告されており、またlncRNAを始めとするnon coding RNAはDNAの立体構造へ影響することがこれまでに示されている。そのため、ゲノム情報だけでなくトランスクリプトームについても解析することにより、広義のエピジェネティクスが放射線治療抵抗性にどのように関わっているか、より理解が深められると思われる。よってエピゲノムに加えてエピトランスクリプトームにも着目し、膵癌細胞株において遺伝子発現形式やRNAメチル化の変化がどのように放射線治療抵抗性に関わっているかを今年度の主な研究課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、膵癌細胞株であるMiaPACAに対してMETTL3をknock downした細胞株を樹立し、放射線治療抵抗性との関連を確認した。また、その細胞株を用いて、RNA-seqによる遺伝子発現解析・RNA免疫沈降によるMeRIP-seqを施行し、alternative splicing variant を始めとする遺伝子発現形式の変化について解析した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の目標は大きく以下の二つである。 1. 放射線治療抵抗性との関わりが示唆されたnon coding RNAについて過剰発現やknock down細胞を樹立し、どのように放射線治療抵抗性と関わっているかをより明らかにしていく 2. エピトランスクリプトームの解析に加えて、当初の研究目標でもあるDNAの高次構造を含めたエピジェネティクスについても放射線治療抵抗性との関わりを明らかにしていく
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究課題であったDNA高次構造の解析の前に、エピトランスクリプトームの解析を行うこととなり、試薬代が当初の予定より安価になったことが考えられる。また実験の進捗状況と学会会期の関係で、国際学会発表が2019年4月になったため旅費の申請が今年度となった。今年度は当初の実験計画を遂行する予定で有り、申請通りの予算である。
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