研究課題/領域番号 |
18K15644
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
石橋 正祥 帝京平成大学, 薬学部, 助教 (80771534)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | TRPM2 / 骨髄抑制 / 放射線 / マウス / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
TRPM2チャネルは、酸化ストレスによって活性化する非選択的カルシウムイオン透過性チャネルであり、活性化に伴い細胞死を誘導することが知られている。申請者は、これまで、5-フルオロウラシル(5-FU)誘導マウス骨髄抑制モデルにおいてTRPM2欠損マウスの末梢血白血球減少、CFU-GMコロニー数減少は、野生型マウスに比較して軽減されることを観測してきた。5-FU誘導骨髄抑制に酸化ストレスが関与しているとの報告があり、申請者は、酸化ストレスが関与する骨髄抑制には、TRPM2チャネルの機能が関連している可能性があると考え研究を進めている。放射線は、細胞内での活性酸素種の産生や直接のDNA傷害によってTRPM2チャネルを活性化させることが知られているが、放射線性骨髄抑制とTRPM2の機能の関連は明らかとなっていないことから、本研究を立案した。2017年度下半期より、野生型マウスを用いて全身放射線照射に伴う末梢血白血球の減少を評価し、照射条件の検証を開始していたが、2018年度より申請者が所属機関を異動したため、新たな機関における研究準備に時間を要した。特に、当機関には当初使用予定としていた放射線照射機器が設置されていなかったため、代替機器の借用等の準備に時間を要した。2017年度までに得られた条件を基に、野生型マウスへ全身放射線照射を行い、骨髄抑制モデルの作成を試みた。設置機器の関係で、骨髄抑制の評価はCFU-GMコロニーアッセイによるCFU-GMコロニー数によって評価した。複数の照射条件において検証したが、観察期間中のマウスの死亡率には問題なかった。野生型マウスにおいて、CFU-GMコロニー数の減少が認められた。次にTRPM2欠損マウスを用いて同条件におけるCFU-GMコロニー数を測定したところ、野生型マウスの結果に比較して差が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2018年度より申請者が新たな機関へと異動となり、当機関における研究実施計画の承認、放射線照射装置の借用、各種備品の準備等に期間を要したため。また、予想に反して、放射線誘導マウス骨髄抑制において、TRPM2チャネルの機能の関連の可能性が低いことが考えられ、計画の方向性の転換について検討を要したことが遅れた要因である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に得られた結果から、放射線照射によるマウスの骨髄抑制の発現において、TRPM2チャネルの機能が関連する可能性が低いと考えられた。動物等の研究資源を有効に利用するためには、計画の方向性の転換の検討を要した。申請者は、各種処置に伴う酸化ストレスの発生に伴いTRPM2チャネルが骨髄抑制の発現に関与しているとの仮説の元、研究を進めていた。5-FU誘導骨髄抑制で認められたTRPM2の関与は、放射線性骨髄抑制ではその関与は認められなかった。ここで生じた疑問は、5-FU以外の薬剤による骨髄抑制の発現におけるTRPM2チャネルの関与の有無についてである。そこで、2019年度は酸化ストレスの誘発が報告されている抗がん剤であるドキソルビシンを用いて骨髄抑制モデルを作成し、検討を進めていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
急遽、申請者の異動が確定し、2018年度より新たに研究環境を整備したこと、及び研究の結果が立案した仮説と異なるものであったことから、研究の進捗に遅延が生じたため。2019年度は研究の方向性を変更し、ドキソルビシンを用いてモデル構築を行い、放射線誘導マウス骨髄抑制モデルを用いて検証予定であった事項を実施していく。
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