本研究課題では放射線治療計画において,その品質を高めるため,治療計画を定量的に評価する手法を開発する.球面上に投影展開し,これを球面調和関数によって係数化することによる手法を確立しており,線量分布にこれを応用することによって,基底を球面調和関数群および切り出し軸からなるテンソル積によって定める展開係数テンソル(SH 係数テンソル)を得ることに成功した.これをすでに集まった頭頸部と前立腺の症例に対し,isomap法を組み合わせて応用することによって,数値化した線量分布の形状を分類する手法に成功した.この成果は論文として報告した.また,強度変調放射線治療における最適化過程の均てん化を図るべく,放射線生物学的指標の一つであるgeneralized equivalent uniform dose (gEUD) を用いた最適化の本質を考察した.これにより,gEUDはその核となる変数aを用いた曲線がその曲線的性質を保存したまま変形することが分かり,これを測地線偏差と見なすことで,このgEUD曲線の曲率停留点付近での振る舞いが最適化上のオブジェクトの均衡に深く関わっていることを見出した.すでにこの成果はプレプリントとして報告している.我々が確立したこれらのメソッドについては,本研究の核である放射線治療品質の指標としてさらなる応用が期待される.令和3年度(最終年度)はこれまでの研究結果からさまざまな応用可能性を模索し,さらなる知見の発展を目指して活動を行なった.
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