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2018 年度 実施状況報告書

新規原因遺伝子LZTR1によるNoonan症候群の発症機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K15657
研究機関東北大学

研究代表者

阿部 太紀  東北大学, 医学系研究科, 助教 (40810594)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード遺伝学 / Noonan症候群 / 先天奇形症候群 / RAS/MAPKシグナル伝達経路
研究実績の概要

本年度は、野生型LZTR1とPPP1CBとの結合に着目し、LZTR1とRAS/MAPKシグナル伝達経路の関係解析に重点を置き本研究を遂行した。
高速液体クロマトグラフィーと質量分析装置を用いてNoonan症候群原因分子であるLZTR1の相互作用の探索を行った結果、LZTR1の新規結合分子を複数同定した。この中からセリン/スレオニンプロテインフォスファターゼPP-1βカタリティックサブユニット(PPP1CB)との結合に注目した。
共免疫沈降法による in vitro 解析により、LZTR1はPPP1CBと結合することが確認された。タンパク質結合モチーフ検索データベースを用いた両分子の結合モチーフ予測の結果、LZTR1のKelchドメインには典型的なPPP1結合モチーフが存在し、この領域を介してLZTR1はPPP1CBと結合する可能性が考えられた。
また、PPP1CBとの相互作用が報告されており、かつNoonan症候群を含む先天奇形症候群(Rasopathies)の原因分子とLZTR1との相互作用を解析した。その結果、LZTR1はPPP1CB/SHOC2/c-RAF (RAF-1)の3分子と複合体を形成することが明らかとなった。
LZTR1遺伝子変異によるMAPKシグナル伝達異常は、LZTR1の機能喪失型変異によるものであることが報告されている。LZTR1標的siRANを用いた検討を実施した結果、LZTR1の発現量低下によりpERK1/2とc-RAF-S259リン酸化レベルの顕著な変化が確認された。
一方で、LZTR1遺伝子変異体と各種相互作用分子の結合の有無、ならびにMAPKシグナル伝達経路に対する影響については不明な点が残っている。そこで、LZTR1変異体による影響を解析するために各種変異体発現プラスミドを作成し、変異型LZTR1の機能解析を開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、野生型LZTR1とPPP1CBとの結合に着目し、野生型LZTR1とRAS/MAPKシグナル伝達経路の関係解析に関しては計画通りに遂行した。PPP1CBとLZTR1の関係性に関しては概ね順調に成果を得ることができている。さらに、PPP1CBのみならず、SHOC2やRAF1といったMAPKシグナル伝達経路に多大な影響を及ぼす分子とLZTR1の関係性も明らかにすることができた。本結果は、Human Geneticsに掲載された。
また、質量分析装置を用いた相互作用解析において同定したPPP1CB以外の分子に関する機能解析にも新たに着手している。
一方で、同時進行予定であった変異型LZTR1を安定的に発現した培養細胞株の作製、ならびに罹患者由来の細胞採取に際する諸手続き等においては、順調に進んでいるものの若干の遅れが生じた。その原因として、クローン作製時の薬剤濃度検討に時間を要したことなどが挙げられる。複数の遺伝子変異LZTR1安定発現細胞株の作製は終了しているため、今後さらに解析する細胞株の種類を増やす予定である。
以上のことから、本研究は順調に遂行されており、得られた成果に基づいた新たなアプローチに着手していることから、進捗状況は概ね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

次年度は、変異型LZTR1と各種相互作用分子の結合の有無、ならびにMAPKシグナル伝達経路に対する影響について解析予定である。変異型LZTR1を安定的に発現している培養細胞株を作製済みであり、このツールを用いて上記内容を詳細に解析する。併せて、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術を活用し、LZTR1ノックアウト、LZTR1変異型ノックイン 細胞株の樹立と、罹患者由来の検体収集を実施予定である。
また、PPP1CB以外の相互作用分子とLZTR1/MAPKシグナル伝達経路との関係性を明らかにすることで、LZTR1遺伝子変異獲得による疾患発症機序の解明に繋げたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

想定していた物品購入費用に比べ実購入費が安価に抑えられたこと、当初予定していた細胞株樹立に多少の遅れが生じたこと、などから予算計上額と実際の使用額に差額が生じた。次年度においても、遺伝子変異型LZTR1発現細胞株の樹立を実施するため、生じた差額分についてはその作製ならびに評価のために使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Delineation of LZTR1 mutation-positive patients with Noonan syndrome and identification of LZTR1 binding to RAF1-PPP1CB complexes2018

    • 著者名/発表者名
      Umeki Ikumi、Niihori Tetsuya、Abe Taiki、Kanno Shin-ichiro、Okamoto Nobuhiko、Mizuno Seiji、Kurosawa Kenji、Nagasaki Keisuke、Yoshida Makoto、Ohashi Hirofumi、Inoue Shin-ichi、Matsubara Yoichi、Fujiwara Ikuma、Kure Shigeo、Aoki Yoko
    • 雑誌名

      Human Genetics

      巻: 138 ページ: 21~35

    • DOI

      10.1007/s00439-018-1951-7

    • 査読あり

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公開日: 2019-12-27  

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