研究課題
本年度は、LZTR1と各種相互作用分子の結合の有無、ならびにMAPKシグナル伝達経路に対する影響について解析を実施した。解析するにあたり、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術を活用し、LZTR1ノックアウト細胞株を樹立した。樹立した細胞を駆使し、昨年度に引き続きLZTR1と質量分析等で同定した新規相互作用分子との関係解析を実施した。その結果、PPP1CB以外の相互作用分子としてがん遺伝子産物RASを同定した。RASはがんの約30%で遺伝子変異が同定されている発がんにおける主要なドライバー因子であると共に、RASopathiesの主要原因分子でもある。そこで、PPP1CBとの機能解析に追加してRASとの相互作用に関しても解析を実施した。その結果、1) LZTR1は古典型RAS(HRAS, KRAS, NRAS)ならびにMRASと結合すること、2)LZTR1はユビキチンE3リガーゼ複合体として機能し、RASポリユビキチン修飾の促進、ユビキチン・プロテアソーム経路を介したRAS分解の促進、に寄与すること、3)RAS下流のMAPKシグナル活性への影響を解析した結果、LZTR1の発現誘導はMAPKシグナル活性を抑制し、LZTR1の発現抑制はMAPKシグナル活性を賦活化すること、を明らかにした。Noonan症候群の原因とされているLZTR1バリアントはその多くが機能喪失型変異であり、上記の結果に合致する。したがって、LZTR1変異によるNoonan症候群の発症にはPPP1CB/SHOC2/cRAF複合体だけでなく、さらに上流のRAS発現制御も関与する可能性が本研究により示された。今後は、本研究課題で明らかにしたLZTR1-RAS分解経路をより詳細に解析し、Noonan症候群のみならず発がん抑制研究にも役立てたいと考えている。
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Cell Death & Differentiation
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The American Journal of Human Genetics
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